談春弟子の会 第二部

らくごカフェ(一人)
「子褒め」立川春太郎
「孝行糖」立川春松
「桑名船(鮫講釈)」立川こはる
(仲入り)
「転失気」立川はるか
「山号寺号」立川春樹
「崇徳院」立川春太
「挨拶」立川談春

 同日に勤務先至近のCDショップで開催された,立川談吉さんの会とどちらにしようかと悩んだ挙句にこちら。
 こはるさんを拝見するのは四回目か五回目か。
 口調が心地よい方なので,ピッタリの演目のはずではあるけれど,詰まる回数が多すぎた。
 人気者のこはるさんのこと,はじめは暖かく笑っていた客も,あまりの詰まりっぷりに苦笑いを経て,手に汗を握り心配し始める。なんだこの状態。
 袖から誰かが助け舟を出したらしく,そちらを向いて「言わないでくれ」と声をかけるやり取りで笑いをとったが,調子は完全には戻らず。(調子よく進むところは本当に良い。)
 下げ近く,「鮫にも伝わって」というところで,違う意味での笑いが起きる。「鮫もあきれて」とでも言えば面白かったのに,と無責任な感想。

 どれ程の自信があったのか,見切りで試しだったのかは判りかねますが,初めてメガネをかけたまま高座に上がったこはるさん。そのせいでもあるまいが,こんなはずではなかったということか,座布団を反して高座を下りる表情がなんとも切ない。
 勉強を怠っているとは思えませんが,この日の結果は明らか。自分を甘やかすこともないでしょうし(印象論です。),めげずに次を目指していただきたい。

 立川はるかさんは,つい先日の談春さんの独演会(にぎわい座)の開口一番で金明竹を拝見したばかり。独特の雰囲気で聞かせます。

 立川春樹さんは,昨年(2011)五月の談春独演会(にぎわい座)の開口一番で拝見しているはずですが,失礼ながら明確な印象がない。
 この日は会場の違いなのか、のびのび演じかなり面白かった。

 立川春太さんも面白かった。
 これは他の方だったか,既に記憶が曖昧なのが情けないところですが,まくらでバレンタインデーに触れ「ブラックデー」が無いというはなしをされていましたが,韓国ではポピュラーなイベントであるということは日本でも割りと知られていると思っていた(回りくどい)のでオヤッという感じ。
 少し調べる気になれば情報はあるだろうになぁ。

 その後,大きな声では言えないが,村上龍に似たおじさんが乱入して来たのかと思ったら師匠の立川談春さんが挨拶。談春一門の昇進って,厳しいのですね。

立川談春独演会@にぎわい座

にぎわい座(二人)

「金明竹」立川はるか
「源平盛衰記」立川談春
(仲入り)
「夢金」立川談春

 はるかさんの言いたては,なかなかでした。

 源平盛衰記は,当然と言うか意識的ではあるのでしょうが談志色が強く,それを期待している人にとっては堪らないのでしょうし,この時期(未だに)私も聴いていて堪らないものがある。
 ではあるけれども,これで最後というのはあまりにもったいない。
 一つの古典として談春流の源平盛衰記を是非聴きたい。この日の源平をやれるのも談春さんだけだけれど,あれを自家薬籠中のものに出来るのもまた談春さんだけだよ。

談志ザ・ムービー「芝浜2007特別編」夜の部

「ぞろぞろ」立川談吉
「火炎太鼓」立川志らく
(仲入り)
「芝浜」(映像)立川談志
 2006年まで何度か奥様と年末のよみうりホールで行われた立川談志さんの独演会に出掛けたが,年々肉体的な衰えが露わになる家元の高座に付き合わせるのも忍びなく,翌年は独りで観た。

 その2007年の「芝浜」は,本人をして「ミューズが降りた」と言わしめた伝説の高座となる。
 にもかかわらず,この目で見この耳で聞いた私はピンと来なかった。勿論,立川談志の芝浜が悪い訳は無いけれど聞かせどころである女房の告白の件が嵌らなかった。
 その後,ご本人だけではなく,廻りからの評判の高さを見聞するに付け,自分の理解度が低いのかなぁなどと考える。
 そして,やはり評価の高い2006年の別公演(これは実際には見ていない)の芝浜を追悼番組で見ても,やはりピンと来ない。
 年齢による衰えはさておき,立川談志の技術や理論の積み重ねから,それらを超える表現が現れることがある。それは素晴らしいものであるには違いないが,要は好みの問題。私好みの演り方ではないということ。ただ,それだけなんだと思う。

 さて,よみうりホールで行われた「談志ザ・ムービー「芝浜2007特別編」夜の部」を見に奥様と出かけた。
 伝説の高座の映像を,それが演じられたよみうりホールで上映する。
 会場に入ると,舞台の幕が開いた状態で,設えられた高座には家元の写真。めくりも「立川談志」。入れ替わり立ち替わりステージに近づき写真を撮る人が絶えない。
 開演が近づき,一旦幕が下りる。
 改めて幕が上がり,談志最後の弟子となった立川談吉さんの「ぞろぞろ」。
 初めて拝見するが,千人を前に怯む素振りも見せず,客席の反応を確認しつつ堂々の高座。30歳になったばかりとのこと。面白い。楽しみ。
 続いて立川志らくさんの「火炎太鼓」。
 談志さんの話は当然ながら,例によって談春さんの話。談春・志らくはBLか。
 談志さんが憧れた志ん生の十八番に,志らくさん独特の笑いを織り交ぜた独特の世界。いやー,面白い。
 中入り後の幕が上がると,舞台上のスクリーンに,正に同じ会場の高座風景が遠景で映し出される。
 スクリーンの端から立川談志が現れると,会場からも拍手が起こる。画面が寄りになり,立川談志の芝浜が始まる。
 話しが終わり沸き起こる拍手を制して「一期一会。また違った芝浜が出来た。」と深々と頭を下げる。スクリーンの中で一旦下りた幕が,再び上がる。「良かったと思う。ありがとう。」もう一度「一期一会」と口にして再び頭を下げスクリーンの中の幕が下りる。
 その映像を隠すように,舞台の幕が下りる。切ない。
 正直なところ,今回の映像でも嵌らないという印象は変わらないのだけれど,それでも立川談志は立川談志だった。
 結局,私が生で立川談志を見たのは,あの高座が最後。自分の芸にも厳しかった立川談志が自らその出来を認めた芝浜に立ち会えたことは,やはり幸運だったなぁ。

立川キウイの会(真打編)

上野広小路亭
「やかん」立川寸志
「豆屋 改」立川キウイ
「小言幸兵衛」立川志らべ
(仲入り)
「死浜(芝浜+死神+粗忽長屋+短命)」立川キウイ

 寸志さん,佇まいが落語家らしい。

 キウイさんの「死浜」はうまく出来ていた気がします。死神が主人公に特殊な能力と金儲けの方法を授ける前提として,失敗を償うという理由がある方が納得できると言えなくもない。
 一つの話としての完成度や,キウイさんの習熟度はこれからにしても。

立川らく次の会-冬-@らくごカフェ

らくごカフェ
「片棒」
「二番煎じ」
(仲入り)
「薮入り」

 東京かわら版平成24年2月号「追悼 立川談志」を読みながら、「立川らく次の会-冬-」へ向かう。8ページの写真がせつない。

 らくごカフェも,らく次さんの落語も初めて。
 昨年十月の立川キウイさんの会の打ち上げで,ほんの一言二言話し,第一印象は「生意気そう」。悪口ではない。根っから陽気な芸人さんというタイプではなさそうだけど,落語は上手いんじゃないかと,これも単なる印象。
 その印象を信じて,昨年十二月上野広小路亭最後の志らく一門会で,ご本人が手売りしていたこの会のチケットを購入した次第。

 家元の話はいろいろな人がいろいろな所でしているので気が進まないと言いながら,しないわけにもいかないのでしょう。誰が「談志」を継ぐのかという話から片棒へ。
 薮入りは初めて聞いた話。らく次さんがよく聴くとおっしゃっていた三代目三遊亭金馬の十八番だったとのことですが,俗に言う古典より下がっているのに,馴染みのない時代背景のせいかなんともピンとこない。聞く側の素養の問題でしょうか。
 母親とはいえ子供の財布を勝手にみるのも,親を貧乏呼ばわりする息子もどうかと思う。父親の単純過ぎるところが救いと言えは救いなのかもしれないが,ご近所の方々への不機嫌そうな対応は腑に落ちず。
 要するに,感情移入できる人物がいない,足場がない状態で困ってしまった。
 それと,袖をはらって「よしなよ」という仕草。バッという袖の音が気持ち良いのですが,随分多用したなぁという印象。
 最初から最後まで印象論ですが,総じて上手いし面白かった。また足を運びたい会でした。

志らく一門会

内幸町ホール
「猿後家」立川らく八(前座・二つ目予定)
「初音の鼓」立川志らべ(二つ目)
「片棒」立川こしら(真打予定)
「唖の釣り」立川志ら乃(真打予定)
「天災」立川志らく

 街中に振袖が溢れていた本日,今年の初落語は,やっぱり立川流。
 立川志らくさんとその弟子による一門会は,会場を昨年までの上野広小路亭から内幸町ホールに変更。
 キャパシティの問題ではありますが,会場の余りの違い振り。小綺麗なホールもいいけれど,広小路亭の感じも捨て難い。
 前座さんより,二つ目さんより,真打ちは面白いと当然な事を思う。
 今日は出だしから些か眠かったのですが,こしらさんで目が覚めた。まぁ,声がでかいというのもあるのですが。
 (志らくさんも同じ事を言ってた!)
 「唖の釣り」はちょっと苦手な話なのですが,志ら乃さんは面白い。
 今回,私は最前列で拝見したので,志ら乃さんの表情の面白さを堪能出来ましたが,後ろの席だとどうなのだろうか。
 今日の志らくさんは,しっくりこなかったなぁ。

白談春

 事前の投票で決まった二題。
 二番が「居残り佐平次」,一番人気は,やっぱり「芝浜」。

 家元死去を受けて,結果に影響があったかは判らないが,年末の「芝浜」は当然といえば当然か。私もこの話に一票を投じたけれど,これは決まっていたようなものなのだから,もう一つに賭けるべきだった。
 聴きたかったのは「紺屋高尾」。惜しくも三番。
 得票数は判らないが,五十の演目の半ばから下位にかけては複数同位が多いところを見ると,それ程の総数でも無いのかと。であれば,私の票でひっくり返ったかもなぁ。
 さて,その「居残り佐平次」が聴きたく無い訳ではない。とても良い「居残り佐平次」でした。

 「芝浜」
 こちらも,とても良い芝浜でしたが,気になった所が一つ。
 女房が夢だ夢だと勝五郎を言いくるめる段で,浜に行った行かないの遣り取り。
勝五郎「おまえに起こされて」
女房「起きたのかい?」
勝五郎「起きなかったよ!」
※言い回しはうろ覚えです。
 このやり取りが何度か繰り返されるのが腑に落ちないのです。
 素直に起きたわけではないにしても,起きて出かけたわけですし,「起きなかった」では浜に行ける筈も無く,言い争いにもならないなぁと,話の途中この点だけがひっかかっていました。

 最後は「夢になるといけねぇ」で切らずに「だろ?」(だったか,これも記憶があやふやですが)と続けておられました。定番の決め台詞というより,女房への語りかけという雰囲気で,書きながらも思い出して涙が出てきますが,これが客席にじんわりと伝わり,徐々に盛り上がるような拍手が起こっていました。

 先日の,志らくさんのときは,これも正確なせりふは覚えていないのですが(いちいち言い訳つきで申し訳ない)決め台詞的で,ほんの一瞬の間があり,爆発的な拍手が起こった印象で,あれも気持ちの良い体験でした。
 それにしても,千人が水を打ったように静まり返り,何を言うかは百も承知で,どんな間なのか調子なのか云い回しなのかと,その一言に耳をそばだてている。そんな状況で話せる落語家ってすごいな。

立川談志 お別れの会

 会場に向う銀座線で,念の為にと切れぎれの電波を拾いiPhoneで確認し,会場がオークラではなくニューオータニであることに気付く。

 地方からいらっしゃる方が間違えなければいいがなぁなどと,いらぬ心配をしていたが,まんまとだ。
 まぁ,虎ノ門と赤坂見附の違いなので事なきを得る。
 途中,駅売店のスポーツ新聞の見出しで,森田芳光さんの急死を知る。「の・ようなもの」は,最も好きな映画のひとつ。

 会は15:30開始の予定だが,複雑な造りのホテルの中,要所にある「お別れの会はこちら」の案内のおかげで15分頃には会場着。掠れた声を振り絞るように「チャンチャカチャン」を演る家元の姿が,会場手前の行列スペースに設置された大型モニターに流れる。列の後ろに並ぶ早々に進みはじめる。
 本会場にも行列。白い花で飾られた祭壇の中央に高座が設けられ,奥に元気な頃の笑顔。
 順番を待ち用意されていた白いカーネーションを手向け手をあわす。
 一門の真打ち連に見送られ,「人生成り行き」のポストカードを渡されて会場を出たところで,時刻は15:30。
※会場出口で手ぬぐいやCDを販売してるのもご愛嬌。会場代も高いだろう。

THE MANZAI 2011

 優勝はパンクブーブー。初めて見るコンビもいた中で,最も面白いコンビの一つであったのは間違いないけれど,無難というかなんというか。

 M1終了をうけての番組として期待がかかるなか,震災と島田紳助さん引退という想定外の大き過ぎる二つのアクシデントに見舞われた挙句の着地点。
 出場者全員面白く,司会がナインティナインでたけしさん,爆笑問題も顔を出すという豪華さのわりに,番組としての印象が希薄。その象徴が,高須さんの審査員,銀シャリのワイルドカード,パンクブーブーの優勝ということならば納得。
 とはいえ,酒を飲みながら四時間,寝落ちしないで見たのだから面白かった。あぁ,これは立川談志の高座とは対極にあるお笑い番組の形。

チキチキジョニー
 面白いな。メガネのズレ方が美しい。

ナイツ
 基本のフォーマットを踏まえて,常に新しい提示がある。とか,理屈無用な面白さ!お腹痛い。

Hi-Hi
 上田さん。苦手なタイプだけど面白い。あべこうじさん的な。癖になりそう。

テンダラー
 しつこいわ!そんなことされたら,そりゃ笑うわ!

スリムクラブ
 資格≠死角に気付くの遅いぞ>私!
 そろそろ酔い始め。

ハマカーン
 会場の反応からすると,結構知られているんだね。

エルシァラカーニ
 酔いも進んで,詳細不明だけれども,面白かった気がする。

ナイツ(二回目)
 お腹痛いって!
 ナイツ優勝で,浅草のベテラン芸人を引っ張り出す冠番組をみたかったなぁ。

美弥

 こんなにも,判りやすいミーハーだったのか私は!と唖然としている。

 銀座の泰明小学校の近くの路地にあるビルの地下。
 時刻もはやく他に客もいないので,家元の写真と戒名が飾られた目の前の席に陣取り,家元が飲んでいたというハイボールをキウイさんに作ってもらい飲む。
 ちなみに,この日はキウイさんの入門記念日。そして,幸か不幸かキウイさんは家元が認めた最後の真打ちとなった。