にっかん飛切落語会 第348夜@イイノホール

2013/11/29(金)18:30 イイノホール

「雑俳」瀧川鯉津(開口一番)
「稽古屋」橘家圓太郎
「権助提灯」柳家花緑
「クリスマスの夜に」三遊亭天どん
(仲入り)
「大工調べ」桂宮治
「笠碁」立川志らく

 この日出演した天どんさん,宮治さん。それに,立川志の春さん,柳亭小痴楽さん,三遊亭萬橘さん,林家たけ平さんの計六名で飛切大賞を争うのだそうです。
 観客には投票用紙が配られ,天どんさんと宮治さんに,それぞれ1~5点の点数をつける。この点数だけで大賞が決まるわけではないようで,参考程度なのかな。それにしても気が重い。

 これまでに生で聞いたことがあるのは,天どんさん,萬橘さん,宮治さん。いずれも面白い。ただ,数では宮治さんがぶっちぎりで多いこともあり宮治さんを応援したい。
 でも,実は音源では天どんさんの方が昔から聞いているんだね,「いーふろん亭 ぽっど寄席」で。声がイッセー尾形さんに似ているなぁと思っていた。面白かったなぁ。萬橘さん(当時きつつき)も面白かった。

 この日の宮治さんは「大工調べ」。聞かせどころの棟梁の啖呵は,何となく丸みを帯びたというかエッジが甘めかなとも感じましたが,きっちりまとめて中手が起きる。続く与太郎の啖呵もどきの部分がいささか長いかなぁとも思うのだけれど,棟梁との対比で情けなさが際立ち抜群に可笑しい。

 いや~やっぱり,宮治さん面白い。心情的にも宮治さんを推したいが,どっこい天どんさんも面白かったんだよなぁ,と悩みつつ配点。

 結果は,来年1月24日第349夜(志の春さん,萬橘さん),3月20日第350夜(小痴楽さん,たけ平さん)を待ってですね。

第八回こはるパラダイス@のげシャーレ

2013/11/27(水)19:00 のげシャーレ

「道具屋」
「三方一両損」
(仲入り)
「宿屋の仇討ち」

 21~23日の「談志まつり」では高座には上がらなかったものの,ずっと太鼓係りで疲れたと。

 仲入り明け,高座の上がり口でちょっと逡巡。楽屋に忘れ物をしたらしく結局取りには戻らず。
 何かと思えば「千歳飴」だそうで,「我ながら似合う」ので披露しようと思っていたようです。
 写真は撮ったとのことですから何処かでパンフレットにでも使うかも。

 ネタおろしの「宿屋の仇討ち」は,初っ端の危機をお客さんの助けで乗り越えた。時々あるよねこういうことが。
 でも,こはるさんに合う話だと思います。

 この日の客入りは,この会としては空席が目立つ感じ。同日,柳家喬太郎さんの独演会が神奈川県民ホールで行われていたことが影響したとかしないとか。

 次回2014/01/17はにぎわい座主催での「こはるの冬休み」。

第25回新宿亭砥寄席・夜席「紅白笑合戦」@新宿文化センター小ホール

2013/11/24(日)18:30 新宿文化センター小ホール

「がまの油」三遊亭わん丈(開口一番)
「南部坂雪の別れ」「孝行糖」立川談吉
「真田小僧」立川こはる
「漫談・一人コント」ねづっち
(仲入り)
「元禄女太陽伝」春風亭ぴっかり☆
「桃太郎」桂三四郎
大喜利〜紅白なぞかけ合戦〜 談吉・こはる・ピッカリ☆ vs ねずっち 司会:三四郎

 17:00まで仕事。その後あちこち寄り道しながら徒歩で会場へ向かう。
 開場10分ほど前の段階で,三階の小ホール前はぴっかり☆さんファンと思しき面々を中心に10人以上の列。開場時刻までに更に列が伸びるが,結果的には半分に満たない感じの客の入り。

 「テレビに出ているねずっちを生で見た!」というのがこの日の印象。なぞかけの答えは,よく考えると上手いのかどうかわからないけど,その瞬間に会場を「オォ~!」という雰囲気にさせるテクニックはさすが。
 落語家の皆さんも(ぴっかり☆さんの終盤の崩れっぷりには目を瞑るとして)それぞれの出来は悪くなかったんだけど,「紅白笑合戦」といった感じではなかったな。

※ぴっかり☆さんの「元禄女太陽伝」は「こはる」「まつのじょう」が主役。そういう話なのだし他意は無いにしても,先日,宮治さんとの二人会でこの話をかけたときも場がざわついたが,こはるさんが出ている会でとなると更に。

※最後のなぞかけ合戦で,他の方がそれぞれ普通のマイクを持っているのに,談吉さんだけが高座で使っていた短いスタンドの38マイクを持っていたのと,答えを急かされて「整いつつあります」とか言ってたのが面白かったな。

深夜寄席@新宿末廣亭

2013/11/23(土)21:30 新宿末廣亭

「寛永宮本武蔵伝 山田真龍軒」神田松之丞
「結雛」(新作)昔昔亭A太郎
「がまの油」桂宮治

 新宿末廣亭の深夜寄席に初めて行ってみた。というよりも,末廣亭自体が初。

 もともとこの日は,よみうりホールの「談志まつり」に行く予定だったのだけれど,妻の都合がつかなくなったのでキャンセルして,朝から仕事を入れた。で,せっかく新宿にいるのだからと21:00過ぎに仕事を終えてから出かけてみた。
 開演21:30直前に到着。入り口で呼び込みをしている宮治さんに「入れますか?」と聞くと「入れるけど座れない。」との返事。せっかくなので入ってみる。確かに満席で既に立ち見も何人か。
 客席後方は既に割り込む余地も無いので,下手桟敷席の裏で立ち見。

 松之丞さんは,七月に西荻窪の宮治さんの会のゲストとして「桑原さん」という新作を聞いたことがあるだけ。力の入った講談を聞けて満足。

 A太郎さんはお名前は存じていたものの初。とぼけた感じが面白かった。

 宮治さんは,昼間のご自身の会で四席演ってきた後とのことですが,疲れを感じさせぬ熱演。

 土曜日は自宅方面の終電時刻が早い。トリの昔昔亭桃之助さんが既に高座に上がっていたのですが,申し訳ないとは思いつつ大事を取って帰途に就く。桃之助さんは「宿屋の富」を演られたらしい。最後まで聞いても,23:00に終われば間に合うかな。

 いずれにしても,この内容で500円はお値打ち!

桂宮治 独演会ですゥ 秋@日本橋教育会館

2013/11/18(月)19:00 日本橋教育会館

「トーク」桂宮治
「手紙無筆」笑福亭明光
「だくだく」桂宮治
「看板の一(ピン)」桂宮治
(仲入り)
「七段目(ネタおろし)」桂宮治

 舞台にメクリが無いな。

 先ずはスタンディングでたっぷりとトーク。

 続く,前座の笑福亭明光さん登場寸前で出囃子がピタリと止まる。暫く再開の気配が無く,しゃれにならない間が空く。ざわつく客席。
 と,あたかも着替え中の態で帯を手に前をはだけた宮治さんが舞台に舞い戻り,トラブルを煽り笑いを獲る。
 「CDの不具合なら他の曲でもいいよ!」と言い置いて宮治さんが下がり,流れた出囃子は「白鳥の湖」。

 明光さんは初めて聞いたが面白かった。

 さて,宮治さん。「だくだく」も「看板の一」も良い。
 「看板の一」の親分が本当にかっこいい。だからこそ,それを真似て失敗する若い衆の滑稽さが際立つ。本当に達者だなぁ……

 仲入り後。座に着くまでは硬い表情だが,話に入れば良い調子。
 幸か不幸か,私は歌舞伎や芝居に馴染みが無いのですが,そんな門外漢が漠然と想像する,いかにも歌舞伎っぽい仕草や台詞回しを判りやすく再現してくれる。上手いのかどうかは皆目わからないけれど……。

 若旦那が芝居に熱中し,自分で封印した刀の鯉口の縛めを解くところで思わず吹き出してしまった。ん~,今回もまんまとやられた。

 終演後,客席に頭を下げお礼を言う宮治さん。だが,拍手で何を言っているのか聞こえない。前回もそうだったんだよ。

 この日の会場である日本橋教育会館(204席)は,前回よりも空席が目立った感じ。イベンターさん分析では「ポール・マッカートニーに客が流れた」と。

 次回は国立演芸場に会場を移す。座席数は300。教育会館もよい会場ですが,国立演芸場となると座席数以上の違いがある。

 適度な過負荷は成長に必須とはいえ,国立の重さが適度かどうかが微妙な感じ。「適度な過負荷」って言葉が破綻しているけど。
 本人の意思だけの選択ではないにしても,少し性急かとも思いますが,何とかするでしょう。

 ただ,程よい規模の会場で満席の客前で演じる達成感というか満足感というのもあるのではないかとも思うのですが,それは別の会で出来るか。というか,国立演芸場が満席になれば良いだけだ。

 国立演芸場での一回目は来年2014年4月22日(火)19:00。「妾馬」他ニ席の予定。ゲストありで2,500円也。この時期にミック・ジャガーあたりが来日しないことを祈ります。チケット発売は12月20日(金)。

 続いて2014年7月29日,10月22日,そして2015年1月19日の予定。

 そうそう,会の名称は「ミヤジの綱渡り」……

負けてたまるか!? 柳家喬の字 vs 立川談吉@道楽亭

2013/11/07(木)19:00 道楽亭

「天狗裁き」柳家喬の字
「よかちょろ」立川談吉
(仲入り)
「孝行糖」立川談吉
「幾代餅」柳家喬の字

 前日に続き楽しい会でした。

 始めて拝見した喬の字さん。滑り出しは慣れない場と客の様子見だったのか静かな調子でしたが,次第にちょいちょい毒を吐きつつも,師匠の雰囲気も漂わせてしっかりと聞かせる。

 私にとっては一月ぶりの談吉さん。喉の調子も良さそうで気持ちよく「よかちょろ」。

 仲入りを挟んで,談吉さん二席目の「孝行糖」も良い調子。仕込み忘れがあったが自ら気づいて修正。
 あの気持ちの良いリズムの外し方は天性のものだな。

 談吉さんが二席目から下がる時に,前日のこはるさんと同じうっかりミス。更に雪駄もアレだったもので,喬の字さんからまんまと突っ込まれる。

 喬の字さんの「幾代餅」。師匠さん喬さん風なのか,さらっと良い感じ。未だ生で拝見したことの無い師匠の高座も是非観たいと思う。

 さて喬の字さん。初っ端のまくらで「打ち上げは柳家と立川についての討論を」などと振り,理屈っぽい人なのかと思いきや,いざ打ち上げになると,落語界に絡めた態を装いつつ,プロレスやテレビドラマの話で自ら盛り上がる。いや,逆なのか?プロレスの話の態で落語界を切っていたのか……。

 何にしても談吉さんの声が直っていたので安心。冬に向かって一層ご自愛のほどを。

※この日のサプライズは客席。
 芸協のホープKMさんの会の掛け声でおなじみのTさん。人呼んで「戸越銀座おじさん」が私の後ろに座っていた。前日同じ場所で78回目の掛け声を聞いたばかり。
 この日KMさんは別の会に出演のはず?と訝っていると喬の字さんに対して「いわつきねぎたいし!(記憶があやふや)」の掛け声。後で伺うと,この掛け声は二回目だとか。
 KMさんから乗換えかと思いきや,ちゃんとそちらにも声を掛けてから来たらしい。大変だなぁ。

負けてたまるか!?こはる VS 宮治@道楽亭

2013/11/06(水)19:00 道楽亭

「ぞろぞろ」桂宮治
「寿限無」立川こはる
(仲入り)
「素人義太夫」立川こはる
「阿武松」桂宮治

 宮治さんの「ぞろぞろ」を受けて「学校寄席のために覚えたんだろ」と揶揄しつつ,自分もそのために覚えたという「寿限無」を演るこはるさん。「寿限無」が面白いって,ちょっと新鮮。
 前半は手を抜いた……ではないな,肩の力の抜けた軽い雰囲気で終了。

 仲入り明けのこはるさん。某所で某師とのニアミスを逃れるために,壊れた雪駄を持って黒足袋で走ったという話。この日も雪駄は壊れたまま。
 「素人義太夫」(寝床)で蔵の窓から義太夫を吹き込むというくだりを実際に聞いたのは初めて。

 さて,こはるさんが下がる際に些細なうっかりミス。続いて最前列にいた一人のお客さんが退席。
 これを受けて高座上がった宮治さんが,ここぞとばかりに毒づいてみせる一幕あり。

 風邪で少し声の調子が良くなかった宮治さん。「阿武松」熱演中に目が潤んでいて熱でもあるのかと思っていたら,どうやら感情移入し過ぎて自ら感極まったらしい。
 打ち上げで「あれが人情話?」などとくさしましたが,実のところ私もちょっとグッと来た。今度何処ぞで演るらしい「妾馬」が見ものです。宮治さんの落語で泣く日が来るのかね。

 ちなみに,途中退席したお客さんは,「阿武松」が終わった後に一旦戻られて,こはるさんに何やら渡してお帰りになりました。どうやら,こはるさんのために雪駄を買ってきたらしい。<未確認

※「ぞろぞろ」というと,小学館「昭和の名人完結編15 林家正蔵(彦六)」付録CDに入っていた音源が大好き。かなり晩年の録音だと思うのですが,林家木久扇さんが演られるものまねそのままのナチュラルビブラートで,一般的な間の感覚を超越した棒読みっぽい語り口。初めて聴いたときは唖然としましたが,何故か繰り返して聴いてしまう。枯淡とはこういうことか。