2004/12/22。一年の〆は読売ホールの「リビング名人会 立川談志」。
落語は好きですが,日常的に寄席に通ったりするわけではなく,これ以外には年に一度くらい誰かの会を聴きに行くか行かないか程度です。
さて,談志さんの「芝浜」はここ五年くらい連続で聞いています。初めは中央会館でした。談志さんの到着が遅れたのか,話が延びたのかで,終わり時刻がおしてしまったのを会場側にせかされたのが気にいらなかったようで,「芝浜」の後で随分ときつい事を言っていたような記憶があります。で,そのせいかどうか,翌年から読売ホールに移ったような……
今回の構成は,着物が届いていないとかで先ずは正真の私服で登場,その後,二昔前の芸人さんの様なキラキラの洋服に着替え。雑談・ジョークから入り,着物に着替えて一席。仲入りを挟んで「芝浜」。
年によってはその後に挨拶めいたことを言うこともあるのですが,今回は拍手の中,自ら舞台袖の弟子に合図を送り幕を下ろさせてそのまま終了。ロビーで待っていれば出てくることもあるようなのですが,まあ私もそこまではせずに人波におされて会場を後にしました。今回の「芝浜」ご本人はどうだったのか。
芝浜,芝浜と繰り返していますが,別にプログラムとして事前に決まっているわけではないのです。いつだったか談志さん本人も「第九じゃあるまいし」とおっしゃっていたように,年末には「芝浜」と客はそれを期待し,今までのところ談志さんもそれに応えているわけです。
正直な話,落語の技術(演技力とか構成力とか)では,現役の方々のなかにも談志さんより上の人がいると私は思っています。それでも聴きに行くのは多分,その落語に対する姿勢なのかな。
小さんさんや志ん朝さんやの会であれば楽しいひと時を過ごしに行くわけですが,談志さんの場合はそんなわけには行きません。厳しいですから。客であろうと気に入らなければ文句を言います。しかも,今時の若手芸人さんみたいにそういうキャラを演じているわけではなく,本気を感じさせます。でも,そんな瑣末なことよりも,その基にあるもの,ともすると聞き手側にもいたたまれなさを覚えさせるほどの自身の芸に対する真摯な態度が緊張感を生み出すんでしょうね。
なにも忙しい師走にお金を払って緊張しに行くこともないのですが「男の生き様を見に行く」とでも言うのですかね。まぁ「そんなもんは芸じゃねぇ」って話ですが。
※談志さんの演技力がどーのとか言ってますが,最後のおかみさんの告白部分では涙を堪え切れません。歳のせいでしょうか。とはいっても客層からすると私より高齢の方はいくらでもおいでになるようですが,泣いてる方はあまり見かけません。