巣鴨元気寄席vol.38@駕籠町会館二階和室

2015/06/24(水)19:00 駕籠町会館二階和室

「初天神」桂竹のこ
「豆腐の佐藤」立川寸志
「スリル」(桂米丸作)桂竹のこ
(仲入り)
「鼓ヶ滝」立川寸志
「のめる」桂竹のこ

巣鴨駅から会場に向かう途中に山靴のゴローがあった。20年,どころでは無いな,30年近く前にここで買ったブーティエル。もう山に行くことは無いが,雪や台風の時などに今でも履く。ここにゴローがあることも忘れていたけれど,思わず立ち寄ってしばし。

さて,「巣鴨元気寄席」には初めて来た。竹のこさん自ら受付。ゲストの立川寸志さんもお手伝いの手作り感溢れる会。
38回目のホームならでは,マクラでのびのびと毒を吐く竹のこさん。
米丸さんから「スリル」を教わる件なんて,物凄く面白かったな。この面白さを落語に活かすにはどうすればいいのだろう。
落語が面白くないわけではないのだけれど,何かもう一つハマると一段階上がるんじゃないかなぁ。

ゲストの寸志さんは,歳相応の落ち着きよう。と書けばそれまでだけど,その大半をサラリーマンとして過ごしてきた人としては異常な落語家ぶり。
で,このような印象は表裏一体,功罪相半ばと言う事がままあるものですが,寸志さんの場合には罪が殆ど目立たない。私の個人的な好みの問題も大きいでしょうが,遠回りした事が,良い効果しかもたらしていない感じがする。年齢的な事以外は。
そして年齢,これは結構大きな問題。立川寸志が今の立川寸志であるためには,必要な遠回りだったのだろうけれど,勿体なかったという思いが捨てきれない。まぁ,周りよりも本人が一番感じている事だろうし,とにかく結果的に落語家でいてくれる事に感謝します。
ただ,一席目から下がる際に,ご本人も想定外の足の痺れから途中でグネッて崩れ落ちたあたりが修行の足りなさか。足首が危険な角度に曲がっていたけれど,大丈夫かな。

比較すれば竹のこさんは未だ未だ若い。先だって寸志さんがツイッターで「異能」「売れるオーラ」「センスエリート」「爆発寸前」と竹のこさんを持ちあげておりましたが,迫る二ツ目昇進を機に一皮剥けて更に伸びて欲しいところ。

終演が微妙な時刻になったので,面白そうな打ち上げには出ずに失礼した。

桂宮治とダーウィンルームの落語ラボ@ダーウィンルーム2Fラボ

2015/06/17(水)19:00 下北沢・ダーウィンルーム2Fラボ

「レクチャー」桂宮治
「饅頭怖い」桂宮治
「お見立て」桂宮治
(仲入り)
「トーク & 質疑応答」桂宮治 + オーナー

一階店内はシマウマの剥製やら昆虫の標本やら頭骨のレプリカやら化石やら動物のフィギアやら鉱石やら図鑑やら博物学系他の書籍やらがぎっしり。窓際にコーヒーが飲めるカウンター。
私も嫌いではないけれど好きな人には堪らない空間だろうな。
会場は外階段から上がった二階。思ったより広いお洒落なカフェ。居心地の良い空間。
http://www.darwinroom.com/
今後のイベント概要は「植物考古学」「科学映画研究会」「写真展」「フィールド生物学」とのこと。異質だな「落語」。
初めての落語会に「ラボ」と銘打って桂宮治さんを呼んだのか。
宮治さんは自分の落語を実験的に解析したりするタイプでは無い。というか,解析はするだろうが,それを表に出すことは無い。
けれど,古典落語をキチンと演じる力があり,その上で,独自の入れ事をふんだんに,時に過剰な程に掘り込んでくる宮治さんは,博物学的な研究対象としては最適なんじゃないか。
そこを狙ったのであれば,オーナー流石に目が高い。
しかし,この日は何人かおられた落語初心者のお客さんの反応に,宮治さんが妙にのってしまい,予定時間をかなり超過。
時間が削られたトークでもオーナーが宮治さんをコントロール出来ず(無理だよね),ありがちな内容に始終してしまった。
質疑応答で興味深い内容もあり,落語も勿論面白かったけれど,「ラボ」という要素は見えないトーク付き落語会だった。
次回,出来れば予め演目を決めておいて(例えば元犬とか),宮治さんが演じた後に同じ演目の古今亭志ん朝さんの音源を聞きながら,採集・同定・分類といった博物学の手法を活かしたトークを繰り広げてくれると面白いんだけど,宮治さんが嫌がるだろうなぁ。
ところで,あのお店の魅力って,置いてある商品自体で完結するのではなく,自然から切り取られた欠片や,自然を模倣して作られたもの,自然を観察して書かれた書物から,想像力でその先にある本来の自然に思いを馳せるってところだと思う。
奇しくも宮治さんがレクチャーで強調していた,手拭と扇子だけを使った落語家の演技の先に何を見るか,それを面白く思えるかは見る側の想像力にかかっているといった事にリンクしている。(うまく纏めたな私。)
吉原や花魁や長屋や与太郎やお殿様や幇間や,見やことも会ったことも無い事物に溢れた世界に連れて行ってくれる落語って凄い。宮治さん凄い。私の想像力凄い。

材木座らくご会プチ・その22 煎り寄席@MODERATO ROASTING COFFEE

2015/06/14(日)18:00 MODERATO ROASTING COFFEE

「権助芝居」
(仲入り)
「お化け長屋(通し)」

 いろいろあって当初の予定より早く14:00前に鎌倉に到着。
 鎌倉駅からブラブラと歩きお洒落なお店や個人宅を眺めながら,会場であるカフェ「MODERATO ROASTING COFFEE」へ。
http://moderato-kamakura.com/
 お店の場所を確認し,さらに長谷方面へ進む。
 大仏は何度か見ているはずだけど長谷寺にあると思い込んでいたのですが,参道が異常な人混み。
 諦めて海を見に行こうかと話していたところ「大仏まで200m」の看板を発見。アレッ,長谷寺と大仏は別だったかと看板に従って進むと高徳院に辿り着く。院の名前は覚えていなかったが見覚えのある風景。
 200円の拝観料を払って入場。長谷寺程ではないけれど,なかなかの賑い。大仏胎内拝観にも行列が出来ていたので,これは断念。
 暫く休んで海へ。しばし由井ガ浜の景色を眺めてから住宅街を抜けて会場へ。時刻的には未だ未だ早い。店内では会に備えてレイアウト変更の最中。近くの別のカフェで一休み。
 落語会は17:30開場,18:00開演。17:00を少し回った辺りで会場へ向かうが,当然,未だ入れず店の前に並ぶ。先頭。
 暫くすると他のお客さんも何人か並ぶ。スタッフとの会話を聞いていると地元の方。今日は何々寺が何とかだしどこそこ院の何とかもあるしと,どうやらこの日の鎌倉は単なる日曜日以上の混雑だったらしい。
 開場。広くは無いL字型の店内の長辺の部分に3×6?,短辺に2×2のレイアウト。角に高座で演者さんは斜めを向く感じ。我々は短辺の前列へ。
 都内の宮治さんの会で見かけるお客さんは殆どおられず,地元の方が中心か。
 例によって会場となっている店を褒めつつも毒を吐いては,その度オーナーに謝る宮治さん。
 仲入りで外れ無しの抽選会。手拭が当たった妻が宮治さんにあからさまなアピール。めんどくさそうにそれをイジってくれる宮治さん。手間をかけさせて申し訳ない。
 二席とも大受け,大盛り上がりな心地いい会でした。

※ちなみに私は「粒マスタードの蜂蜜漬け」なるものが当たったのですが,何に合わせればいいのか妻が悩み中。

第一回 土曜の半ドン寄席@ミュージック・テイト西新宿店

2015/06/13(土)10:30 ミュージック・テイト西新宿店

「ガマの油」立川こはる
「新日本風土記」瀧川鯉八
(仲入り)
「暴れ牛奇譚」瀧川鯉八
「品川心中(序)」立川こはる

 職場近くの会場。平日の勤務開始時間から30分遅れで開始のこの会。土曜日は仕事を休むことが多いのだけれど,午後から仕事の予定を入れて,その前に立ち寄り。どちらがついでなのか微妙。
 好きな二人の顔合わせ。それぞれの会は何度か聞いているけれど,二人が揃うのは珍しいと思っていたら,やっぱり初顔合わせだとのこと。

 「ガマの油」では,ハッキリとした結構大きな言い間違いがあったけど,本人は気付かない様子で進め,客席もざわつきもしなかったので私の聞き間違いか。だとしたら,私の脳があぶないかも。

 マクラも無く始まった「新日本風土記」。初めて聞いた。凄い。

 「暴れ牛奇譚」は何度か聞いているが,その度に面白い。

 「品川心中」も数度目。良い出来。

 お二人とも好きなんだけど,鯉八さんの会は見逃しがちで,気付いた時には他の予定が入っていたり満席だったり終わっていたり。もう少し頻繁に聞きたいので,まめにチェックしよう。

 ちなみに,この二人の組み合わせ,同じ会場の夜の部で八月頃にも予定されているらしい。

第26回 立川談吉 だいじな会@ミュージック・テイト西新宿店

2015/06/09(火)19:30 ミュージック・テイト西新宿店
「元犬」
「およそ3」
(仲入り)
「唐茄子屋政談」

 立川談吉さんネタ出しの会。その演目は「元犬」。あれ?ネタ出しにしてネタおろしでもあるのかな?
 アッサリ。あぁ,元犬ってこんな話だったよね。
 ご本人はあまり合わないと感じているようでしたが,そんなこと無いけどな。

 「およそ3」は。先日の百席に続いて二回目。ご本人が高座で演るのは三回目なのかな。
 前回,「この話かなり好き!」と感じたけれど,やっぱりかなり好き。
 ただ,日をおかずに続けて聞いたせいか,印象がかなり違った。
 当然何も知らずに聞く一回目と,知った上で聞く二回目で印象が異なるのは当然だけど,改めて古典の強さを感じた気がする。
 演者さんにとって古典であれば,ネタおろしであれ二回目であれ自分以外の音源を聞いたことがあるはず。聞く側にしても,別の人で聞いたことがあったり,そうでなくても演目や簡単な内容くらいは知っていることも多い。
 良くも悪くも暗黙のうちに漠然と共通の場があるのだけれど,自作の新作となれば全体像もおぼろげで都度作って行くことになる。無数の演者に揉まれ叩かれて生まれる強度は無い。
 もちろん,だからこそ存在する輝きもある。工業デザインのプロトタイプが持っているドキドキワクワク感ね。

 談吉作品に限らず,私が新作落語を聞いた時に感じる(面白いつまらないとは別の)頼りなさは,そんなところに原因があるんだと思っている。
 そんなに広く深く新作派を聞いてはいないけど,鯉八さん(粋歌さんもか)の新作の強度は異例。
 談吉さんは「およそ3」を今後しばらくは演らないとおっしゃっていたけれど,この話は時々でも演って強くして行って欲しいなぁ。ドキドキワクワクは残したままで。

 「唐茄子屋政談」はどっしりと出来あがった古典落語が,過剰な「糊屋の婆」にバランスを崩すこと無く受け止める。ミスが目立ったのはアレだけど,面白いなぁやっぱり。

負けてたまるか!? 桂宮治 vs 立川笑二@道楽亭

2015/06/08(月)19:00 道楽亭

「かぼちゃ屋」立川笑二
「鰻の幇間」桂宮治
(仲入り)
「熊の皮」桂宮治
「青菜」立川笑二

 妻と。
 彼女は道楽亭3,4回目くらい。待ち合わせも決めていなかったが,私の仕事が終わり17:30頃に連絡してみると,17:00くらいから道楽亭の近くに居るとのこと。
 開演は19:00。間違えたわけでも無く早めに行っただけらしいが,最前列狙いにしても早過ぎるよ。
 仕方が無いので私も向かう。18:00前。流石に並ぶには早いので,近くに出来た公園で待機。我々の他には男性二人連れが三組。
 暫くすると道楽亭入り口に男性が一人立ったので続いて並ぶ。開場までに10人弱並んだかな。当然のように最前列まん真ん中に座る妻。横手のカウンターが上げられ,左右の壁際,通常の最前列の更に前に二つづつ補助席が出されているが,結局そこに座ったのは一人だけ。
 二人でのオープニングトーク。メクリは笑二さんの名前が出ていたが,決まっていたわけではないらしく,順番決めでひとくさり。例のごとくトリを避けたがる宮治さん。結局ジャンケンで決定。
 笑二さんの一席目が終わり,座布団を返してメクリをめくると白紙。
 席亭が裏返しにセットしたらしく,メクリ台を180度回して宮治さんの名前が見えるようにした笑二さんだが,名前の前にメクリ台の支柱。その後,宮治さんが無理にめくって表に名前が出るようにしたものの,上が詰まって変な感じ。意図的な仕込みだと憤る宮治さん。本当のところは謎。
 宮治さんが「鰻の幇間」で楽屋の前座修行について立川流をいじったり,「熊の皮」の冒頭で「かぼちゃ屋」の与太郎を引用したりするも,笑二さんの方は淡々。
 「青菜」のおかみさんの可愛らしさが引き立ったのは「熊の皮」のおかみさんの後という順番の妙か。
 四席とも文句なく笑った。妻も満足気。ちなみに,妻が笑二さんを見るのは二度目だが「雪だるまみたい」とのことです。確かに,丸くなった感じ。
 15人程残った打ち上げも盛り上がった。妻と一緒ということもありお酒も抑えて皆さんより早めに失礼したが,翌朝の枕元に何故か歯磨き粉のチューブが転がっていたり,眼鏡がバッグに入ったままだったりした所を見ると,そこそこ酔っていたらしい。あー,楽しかった。
※道楽亭の丸椅子が新しくなってました。安心して座れますよ。

談吉百席 第十回@アートスペースサンライズホール

2015/06/06(土)19:00 アートスペースサンライズホール

「野ざらし」
「およそ3」
ゲストトーク・前田一知さん
(仲入り)
「黄金餅」

※この文章いつも以上に特に後半が冗長です。

 立川談吉さんの主軸の独演会である「談吉百席」。その記念すべき10回目。
 六月六日に雨ザーザーとは降らなかったが,一応ポツリポツリと落ちて来たのは,さすが雨師の面目躍如。

 「この会に懲りずに来てくれるお客様は本物の変わり者」という談吉さんの言葉からすると,皆勤の私は真の本物。

 「野ざらし」も「黄金餅」も何度か聞いたことのあるネタでしたが,この会では演ってなかったのですね。意外。
 この日は時間的な制約があったと思うのですが,いずれの出来も良かった。

 ツボに入ったのは,「黄金餅」で棺桶代わりの菜漬の樽を寺に運び込むのに壊れて開かない門扉を倒すところ。
 以前談吉さんが,壊れた門扉を避けて垣根の人一人やっと潜り抜けられる穴から入ったのはいいけど遺体の入った樽をどうやって入れたんだという指摘があり,私自身はそこは気付かずにスルーしていたので,あぁッそういえばと改めて不思議に思った次第。
 落語のすべてに理論的な整合性を求めるつもりはないし,そこは私的に許せるところではあったのですが,「門を倒して」の単純明瞭さは痛快。

 この日の白眉は「およそ3」。直前の会でおろしたばかりの新新作。ありふれた日常の会話から立ち現われる不思議な世界。
 これが落語なのかどうか何とも言えないのだけれど,落語家立川談吉が高座で演れば落語です。この話かなり好き!

 更には前日に急遽決定したトークゲスト。
 記念の会と言う事で初めてのゲスト。記念だからこそ独りでとか,怪我をおして師匠がゲストにとか,イタコ経由であちらの師匠をとか,周囲の期待も様々だったでしょうが,何のアナウンスも無かったところに前日かなり遅い時刻での発表。
 そのゲストが「前田一知」さん。一般的な知名度はわかりかねますが,知っている人はオッとなる名前。
 桂枝雀さんのご子息で本職としてではないようですが落語もなかなかのものだとの噂。
 正直,見たい思いと見たくない思いが入り乱れていた方だったのですが,これで見ざるをえなくなったわけで,私のミーハー要素が一気に沸騰。

 トークは談吉さんが頑張ってまわし,前田さんも沢山語ってくれた。ここでしかと言うような話があったわけではないが,着物を着て登場した前田さんの顔立ちや声,立ち居振る舞いが想像以上に枝雀さんに似ていて,私は涙ぐんでその姿を見つめていたわけですが,その涙の理由は自分でもわからない。
 挙句の果ては楽屋に押し掛けて,枝雀さんの千社札シールを貼ってある携帯電話でツーショットの写真まで撮ってもらった。大人げない失礼な事をしてしまったと反省しています。

 ちなみに私が定期的に落語を聞くようになったのはここ数年。それ以前も単発で年に一回あるかないかのペースで落語を聞くことはあったけれど枝雀さんには間に合っていない。生で拝見したことはない。
 大好きな落語家さんではあるが特別な思い入れは無い筈だと思っていたが,妻に指摘されて気が付いた。所有しているCDやDVDの数は枝雀さんが突出して多い。とはいっても十数枚のレベルだけれど。
 生で聞く事が出来ないからという事もあるだろうけれど,やっぱり大好きな先代小さんさんや志ん朝さんが「昭和の名人」といったムックの付録くらいしか無く,談志さんでも5枚に満たないのに比較すれば不思議。
 なお,妻も枝雀さんが大好きだが,私と前田さんのツーショット写真を見て「(枝雀さんに似ていて)恐い。毛がある,恐い。」とこれまた失礼な発言。

 前日初対面の前田さんへのオファーが実現というのは,談吉さんのここ一発の運の強さか。
 結果的に,枝雀の血脈(けつみゃく)は談志の血脈(けちみゃく)の記念の会のゲストとして見事な選択だったのではないかと今思っています。

 談吉さんの(そんなこと無いと思いますけど)苦し紛れの決断に拍手。