立川寸志の落語研究部@お江戸日本橋亭

2015/05/31(日)18:00 お江戸日本橋亭
木戸銭:当日1,800円 / 予約1,500円
「真田小僧」立川だん子
「青菜」立川寸志
(仲入り)
「狸札」立川寸志
「研究トーク(狸札)」立川寸志
「野ざらし」立川寸志

 立川だんこさんは初めて。噂だけは聞いたけれど,駆け出しの前座さんとしてはこんなものなんじゃないかと思いつつ,小林聡美さんに似てなくもないかなぁ……と余計な感想。

 「青菜」は好きな話。いい感じ。

 「狸札」は事前に配られていたテキストで,うっかりと寸志さん考案のサゲを読んでしまった。
 字面では面白いと思えなかったが,これを寸志さんはどう面白く演ってくれるのかと,何だこの寸志さんへの信頼感。それほどの回数を聞いているわけでもないのに。
 で,結果としては面白くならなかった。

 直後に,自らの「狸札」を俎上にあげて,あれがあーでこれはこーだと,まぁ無粋なことこの上無い。
 そちら側の人が人目を忍んで独り頭を抱えて悶々としてやるやつなんじゃないのか。または,こちら側の人が,居酒屋で無責任に嬉々としてやるやつなんじゃないのか。
 そちら側の人が,人前でやるべき事かどうかは知らないが,わが身を刻むような,本人に何の得も無い事を,怯えつつもやらずにいられない寸志さんが素敵だ。
 サンキュータツオさんがM1当時の漫才の面白さを解析した事があったが,あちらは芸人・漫才師の他に言語学者の顔もお持ちなのでまだアレだが,落語家立川寸志さんにはそんな足場もないのにね。

 苦行の後の「野ざらし」は面白かった。

 次回のこの会は10月10日予定。私はまた見たい。

第14回 こはるパラダイス@横浜にぎわい座・のげシャーレ

2015/05/27(水)19:00 横浜にぎわい座・のげシャーレ

「ちりとてちん」立川こはる
「狸札」立川らくみん
「千早ふる」立川こはる
(仲入り)
「品川心中・序」立川こはる

 博多日帰りの仕事の話。博多の方は空港から会場まで10分そこそこだけど,自宅から羽田までは一時間半だとか。チョット喉の調子が良くない様子。

「ちりとてちん」がネタおろしかな?軽くくすぐりを入れながらも,それほど特別な事もせずキッチリと。そのキッチリでちゃんと面白い。

 勉強に来ていた志らく一門の前座らくみんさんが,急遽?高座に上がった。時間の関係か走り気味の「狸札」。初めてらくみんさんを聞いたという方が「もっとクネクネしているかと思たら,ちゃんとしてるね」と。
 こはるさんの後だからか,いつも以上に女の子っぽさが際立った。これ,どちらにも失礼かな。

 「千早ふる」もキッチリでちゃんと面白く。

 「品川心中」は,終盤で悪い事の真っ最中の親分宅に金蔵が現れ,すわ手入れか?と大慌てになる件でポカ。で,お客さん大受け。何これ?最早お約束なのかな。
 間違えなきゃいいってわけじゃないけれど,間違えない方がいいよ。

 でも,全体的に楽しく良い会でした。

「2015 立川笑二独演会~『師匠の噺(粗忽長屋)』と他二席~@お江戸上野広小路亭

2015/05/24(日)19:00 お江戸上野広小路亭

「粗忽長屋」
「大工調べ」
(仲入り)
「宿屋の富」

 最近話題の携帯電話の駅張りポスターに因んだ話に続いて,初っ端が師匠の噺である「粗忽長屋」。談笑さんのは聞いたことが無いが,他の落語家さんの名前が出てくる部分をバッサリ切ったらしい。
 サゲは師匠の形なのか,な?ほぼ存知ないながらも談笑さんぽいかなぁと。

 笑二さんの「大工調べ」は何度めだろう。この日は中手が起きなかったが,出来が悪かったわけではない。少なくても私の耳には気になるトチりは無かったけれど,もとより笑二さんの売りは別。エッジが立っていない分,もしミスがあっても目立たないが,きっちり演ってもオォー!とならない言い立てがある演目は,ちょっと勿体ないようにも思うけれど,他の部分も充分過ぎる面白さ。

 「宿屋の富」では,はったりをかます似非お大尽も可笑しいが,終盤の宿屋主人夫婦の繰り返しのやり取りでクスクスと笑わせ,長いかなぁと感じるか感じないかの絶妙なところで,パッと爆笑を取る。

 次回の師匠の噺は「愛宕山」。

YOSE de GOLDEN CUP(横浜本牧ゴールデンカップ寄席)@ゴールデンカップ

2015/05/20(水)15:00 ゴールデンカップ
「たらちね」立川らくみん
「化け物使い」細井寿代(役者落語)
(仲入り)
「チューバ演奏」佐藤桃
「明烏」立川寸志

 更新した免許の受け取りのために仕事を休すみ,昼前に警察へ。受け取り書に「印鑑をお忘れなく!」と書いてあったのにも関わらず忘れたけどサインで大丈夫だった。
 弘明寺駅から日ノ出町駅。長者町を歩き,仲村川・車橋を渡って左に折れて川沿いを歩き石川町駅を過ぎて元町の交差点を右に曲がる。
 初夏の日差しとハートランドビールの誘惑に負けて,045マイロでトマト & バジルのアメリカンピザで一服。
 第二山手隧道を抜けて,だらだらと歩く。微妙に曲がった主道と,これまた曲がっていたり短かかったりする路地と言うか脇道の交差が生み出す有機的な風景が,城下町の格子状の街並みで育った私には何とも不思議な印象。
 真っ赤なオープンのアメリカンクラシックカーが停めてある商店街を歩き,ゴールデンカップに到着。

 一番乗りで高座前の席を確保。そのうちに地元客らしい男性グループ,同じく女性グループ,着物姿の男性客が訪れて,ツばなれ。

 開演直前にCDプレイヤーの不具合が発覚し,出囃子なしでらくみんさん登場。
 師匠の芝居があって,久々の落語とのこと。女性特有の声の高さも気にならず,しっかりした出来。
 席亭が何とかしたようで,細井さんの出ではCDプレイヤーが復活。役者落語というカテゴリーがよく判らないのだけれど,頑張ってました。
 チューバのソロは珍しいと思うのですが,女性としては大柄な佐藤さんが奏でる生の金管の低音が心地よい。
 トリの寸志さん。話に入る前に「顔と名前だけでも覚えて」と客席を廻って一人一人と握手。後で裏の真意を伺ってなるほどと思ったが,その時は見抜けなかった。
 「時次郎を羽生結弦のイメージで演ってる」と公言されていた点はスルーしますが,面白い。
 時次郎と父親のやり取りの前に,源兵衛とのやり取りを入れるのは,他にもある形なのかな?
 テキストから外れた時に瞬時にカバーして気にさせないのが強みでもあるけれど,話の流れで「OK」と言ってしまったのは,柔軟性の功罪の罪が出たかな。

宝井琴柑講談会 きんかんよみ~初夏のコイ~@お江戸日本橋亭

2015/05/17(日)13:00 お江戸日本橋亭
「水戸黄門が野菜を作る話?」神田こなぎ(前講)
「五條橋」宝井琴柑
「雨月物語 夢応の鯉魚」宝井琴柑
(仲入り)
「荒木又右衛門が棒術の達人と試合をする話?」 一龍斎貞橘
「お富与三郎 玄冶店」宝井琴柑

 日曜の午前中。マンション管理組合の会議があり,午後から仕事へ。「オークションへ行かないでね」と前日の立川流一門会での私の衝動を見透かして妻の一言。
 「仕事だよ。」といいながら,実はその前にお江戸日本橋亭へ。隠すつもりは無かったけれど,言いそびれちゃった。

 講談だけの会は初めて。やはり落語の会とは違った雰囲気(な,気がする)。
 とりあえず客席に知った顔がいない。太鼓も鳴らずに幕が開く。出囃子無しで演者登場。
 前講となっていましたが,呼び名は前座さんでいいらしい。前座さんが少なくなって,特に土日の会では奪い合いだとか。
 こなぎさんは天下の副将軍がお百姓さんに「農は国の基」と諭されて自ら畑を耕して野菜を作るという話。
 琴柑さんの「五條橋」は,お馴染みの牛若丸と弁慶の話。
 「雨月物語 夢応の鯉魚」は上田秋成を基に琴柑さんが書き起こした台本だとか。不思議な話。

 仲入り開けて,やはり太鼓も出囃子もなくゲストの真打:一龍斎貞橘さんが登壇。

 マクラと言うのか導入部は普通に話されていたが,講談に入るとチョット癖のある発声になる。初めのうち少し気になっていたが,次第に引き込まれる。
 荒木又右衛門は曾我兄弟・赤穂浪士と並んで三大仇討ち話の一つなのだそうだが,この日の話はそこに至るズッと前の出来事らしく,軽くて笑い所も多く楽しい。
 門外漢にも判る真打の巧さ。

 トリの琴柑さんは「お富与三郎 玄冶店」。私が知っているのは,琴柑さんも触れていたが春日八郎さんの歌。知っているとはいえ部分的で,全体としてどんな話かは知らなかったが,かなり暗い話だった。
 まぁ,これも長く続く話の一部分らしい。
 ちなみに「五條橋」が武芸物,「雨月物語」が文芸物。「お富与三郎」は「世話物」と言う事になるらしい。

 講談,面白いけど,広くて深そうな世界。

立川流広小路亭昼席@お江戸上野広小路亭

2015/05/16(土)12:00 お江戸上野広小路亭
「たらちね」立川志ら松
「鮫講釈」立川寸志
「よかちょろ」立川談吉
「金明竹」立川三四楼(立川談奈代演)
「火焔太鼓」立川志ら乃
(仲入り)
「元犬」立川笑二
「片棒」泉水亭錦魚
「漫才」米粒写経(立川左談次代演 )
「道具屋」立川雲水
オークション

 立川流一門会に足を運ぶことはほとんどないのですが,好きなメンバーがそろったこの日の会。
 とどめに米粒写経が入ったことを知り,妻に声をかけると「行く」と即答。
※左談次さんの休演を喜んでいるわけではありませんので念のため。

 開場10分前に到着。10人の列。最前列ど真ん中に陣取る我々。

 寸志さんの「鮫講釈」は良い調子。ミスしてるんだけどなぁ……
 談吉さんはトチった時に見せるセルフビンタが二回。
 三四楼さんは初めてかな,私は。独特……
 志ら乃さんの火焔太鼓を初めて見た。ちょっと妄想部分が長いなぁと感じたけど,面白かった。

 仲入りで舞台がゴソゴソしていたのは,米粒写経対応で場所を作るために高座を後ろに下げたらしい。

 笑二さんの元犬は後述
 錦魚さんは二回目か。小談志になるんですね。真打昇進おめでとうございます。
 舞台最前列に立つ米粒写経さんの漫才は見上げる感じ。居島さん面白いなぁ。タツオさんもラジオだと結構熱く語るタイプなんだけど,漫才の時は熱くボケる居島さんにクールに突っ込むのもおかしい。
 雲水さんも初めて。前座さんが片付け忘れた漫才用のマイクスタンドを自ら袖へ運ぶ。慌てて受け取りに来る前座さん。
 上方言葉。そんなことも知らなかった。

 その雲水さんの仕切りで始まったオークション。浴衣地とか欲しいものもあったけれど,妻にガッチリと手を押さえられてしまった。
 こはるさんの告知入りティッシュ一箱も出品され落札された。「サインが欲しい」との落札者の希望にこたえて,楽屋からこはるさんが顔を出す。

 さて,一番の収穫は笑二さんの元犬。私は何度か聞いたことがあったけど,あのサゲについて誰かと話す機会は無かった。
 この日,妻が笑二さんの元犬をいたく気に入り,サゲの時には感嘆の声を上げていた。帰り道,妻の方からその話を切り出したので,サゲについて聞いてみたところ,私とは違う解釈。
 「そっちかぁ」とか「えー!」とか話せるのが嬉しい。

第25回 立川談吉 だいじな会@ミュージック・テイト西新宿店

2015/05/12(火)19:30 ミュージック・テイト西新宿店
「牛ほめ」
「ピッケル」
(仲入り)
「笠碁」

 前回まではリクエストの会だったが,今回よりネタ出しの会。で,「牛ほめ」をネタ出し。
 「牛ほめ」「笠碁」は談吉さんに会っているようで,聞いていてとても楽しい。

 先日の「シェアする落語」とは違って,この会に足を運ぶのは落語初心者というよりは,ややコア寄りの落語ファンというか談吉ファンと思われるが,新作落語「ピッケル」がいい具合に客席に食い込んでいた感じ。ピッケルだけに。(巧いこと言った,私。)
 ご本人は「この話を演ると,客席が微妙な感じになる」とおっしゃっていたが,そんなことはなかったけどなぁ。

 談吉さんの新作。今後,けっこう力になる気がする。個人的には「江戸犯罪暦西の森犯科帳」のシリーズに物凄く期待していますが,サイゾーだけで打ち止めって可能性もあるなぁ。

シェアする落語 第9回 立川談吉@古石場文化センター 3F 第1和室

2015/05/09(土)14:00 古石場文化センター 3F 第1和室
「野ざらし」
「仏四噺」
(仲入り)
シェアタイム
「かぼちゃや(唐茄子屋政談)」

 マクラでは,落ち着かないのかしきりと袴の紐を解いたり結び直したり。
 話に入れば,野ざらしの「オキニ」とか唐茄子屋の「糊屋のババア」とか,やっぱり面白かった。
 ちなみに,談吉さんご本人は唐茄子屋を演るのは二回目だと思い込んでいたようだけど,私は百席とテイトに続いて三回目の「糊屋のババア」なのをハッキリ覚えている。

 意外だったのは「仏四噺」。
 私が聞いたことのある談吉さんの新作の中では「江戸犯罪暦西の森犯科帳~師匠殺しのサイゾー~」が一番好き。
 「仏四噺」はそれに比べれば,という前提ではあるけれど,一歩及ばないと感じていた。
 ところどころ,跳び方に置いていかれる部分があって,つまりついていけないところがあって,その都度テンションが一旦下がるのが勿体無いなぁと思っていた。

 そんな私の感じ方はこの日も変わらなかったのだけれど,そのポイントがことごとく受けていた。結構な笑いが起こっていた。
 最前列に座っていた私は,この話をつまらないと思っているわけではないけれど,背後の受け方を失礼ながら不思議に感じていた。
 コアなお客さんからそうでもないお客さんまでいたと思われるあの場で,あの話で,あの受けを取れるのも成長の証なんだろうな。頻繁に,とは言えないまでも,割に定期的に見ているから,その伸びに麻痺していたのかな。刮目すべし,私。

桂宮治 vs 立川寸志 熱闘! 他流試合二人会

2015/05/03(日・祝)19:00 ムーブ町屋3階ムーブホール

「狸札」三遊亭けん玉
「金明竹」立川寸志
「お化長屋」桂宮治
(仲入り)
「トークバトル」(立川寸志二ツ目昇進披露口上)
「弥次郎」桂宮治
「景清」立川寸志

 新宿の仕事を17:00で上がり,銀座松屋のミッフィー展のショップだけを再訪。「だいすきなおばあちゃん」の手拭や「おばけごっこ」のフィギュアの購入を全身全霊で我慢して目の保養だけ。千代田線日比谷駅から北綾瀬行き。

 ここがムーブ町屋か。

 前座のけん玉さんは三回目かな。時々泳ぐような視線と妙な間が可笑しい。

 寸志さんの「金明竹」は初めて聞いたけど,ひたすら明るい上方の人に爆笑。お腹痛い。
 何だろうね,ついこの間二ツ目になった人かね本当に。

 主催者さんが用意した,出囃子ではない「阿波踊り」で登場の宮治さん。上手最前列の私からは下手袖で踊りに挑戦している宮治さんの姿が見えたが,結局普通に登場。
 この会は寸志さんの会だから気軽だと。
 「お化長屋」は久しぶり。もう,そんな季節だね。
 このお話には個人的に苦手な点もあるのですけど,それはさておき,やっぱり爆笑。で,最後にグダる。

 仲入り後に幕が開くと,高座に黒紋付の二人が並んで頭を下げている。下手側の宮治さんの仕切りで寸志さんの二ツ目披露という態ですが,結局は二ツ目になってどうかという話から,二ツ目から前座になったらという話で盛り上がり,結構時間が押した感じ。
 寸志さん自慢の由緒正しい羽織袴の話題も宮治さんの一言でトーンダウン。からの三本締め。

 一旦,幕が締まり,また開く。板付きの宮治さん。短いマクラから「弥次郎」。
 いつも仲入りまでが長く「後半は短いよ」といいながら,そうでもない宮治さん。この日の「弥次郎」は本当に短かった。トリの寸志さんが「羽織をたたむ間もなかった」と。

 寸志さんの「景清」は先日の会でも聞いた話。時間の関係か刈り込んできたように思うけど,この方がいいかな。でも,やっぱり雷雨の際の旦那の行動を誰か説明してくれないか!

 お二人とも類まれな面白さ。遠回りをしてでも落語に巡り合い,舞い戻ってくれたことは,我々にとっても僥倖。
 寸志さん,そんなに枯れ急がなくてもいいよ。

 それにしてもムーブ町屋,遠い。