立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」@KAAT 神奈川芸術劇場

2014/12/28(日)15:00 KAAT 神奈川芸術劇場
「夢金」
(仲入り)
「文七元結」

 今年二回目の立川談春さん。

 日頃は小さな会場で二つ目さんの落語を聞くことが多く,それはそれで十二分に面白いので,たまにこのような会に来ると,会場の広さと,それを埋め尽くす客の多さに戸惑う。何がそんなに違うのか。
 この中の10分の1とは言わぬ,100分の1でもあの二つ目達の会に行ったらいいのに,などとも思う。いくらなんでも10倍面白いわけでもあるまいし。

 二日連続の会の,この日は二日目。「昨日の出来が良かったから今日は違う話を演りたいくらい。芝浜か。」などと客を弄ぶ談春さん。演るはずもなし。

 先ずは,テレビ出演や 三十周年絡みの出来ごとをたっぷりと。
 「文七元結」が控えているからと言って「夢金」が軽いわけじゃない。と,これはご本人の弁。そりゃそうです。

 「夢金」が終わっても高座を降りないので,三席演るのかと思ったがそうではなく,仲入り後はマクラ無しでいきなり「文七元結」に入ると宣言して,その代わりでも無いでしょうがまた暫く時事ネタなど。

 さて「文七元結」。
 佐野槌の女将の存在感で,これはもはや違う話なのではないかと感じながらも,その後の橋の上での長兵衛の台詞に,やっぱり「文七元結」だよなぁ。

 女将の件はアンチならば鼻につくと思う。あれは誰に向けての台詞なんだと白けるかもしれない。
 それでも談春好きな私としては,そんな思いごと分水嶺のあちら側に転がり落ちて,やっぱり泣いてしまうのです。

 そして終わってみれば,やっぱりこの会場をいとも簡単に満杯にする立川談春は明らかに違うのだ。10倍面白いとは言わないが,諸々込みで,それ以上の違いがあるのか。

 二席で2時間50分。
 皆があの位地や方向を目指しているわけではないにしても,あんな所に行くことが出来るんだな。というか,行くことが出来る人がいるんだなぁ。遠い……

第八回 談吉百席@サンライズホール

2014/12/27(土)19:00 サンライズホール

「権兵衛狸」
「二十四孝」
(仲入り)
「鼠穴」

「権兵衛狸」は,どおってことないんだけど笑っちゃう。

「二十四孝」はこれからかな。「天災」があれだけ面白いからね。でも,私的には「二十四孝」はサゲが切なくてさ。

談吉さんの「鼠穴」は随分と久しぶりな気がする。去年は聞けなかったのかな。
黒の着物で黒背景の簡素な高座に座る談吉さん。凛としている。
出だしのアクシデントや,言い間違いもあったけれど,良い高座でした。百席で同じネタは演らないでしょうが,別の会ででも来年も聞きたいものです。

2014立川笑二独演会 冬@お江戸上野広小路亭

2014/12/21(日)18:00 お江戸上野広小路亭

「鮫講釈」
「五貫裁き」
(仲入り)
「鼠穴」

 沖縄の放送局の取材が入っていた。手持ちのビデオカメラで。
 最近は沖縄での仕事も多いらしく,そんな話をひとしきり。手話が15分が限度だとは知らなかった。確かに「20分交代が全国基準」という情報もあった。

 笑二さんで後味の悪い話を聞いたことが無い。個人的にかなり嫌いな「持参金」も,以前笑二さんで聞いた時には悪くないと思えたものだけど,この日の「鮫講釈」では悪い意味では無い逆の感情を持った。
 今までそんなに引っかかったことの無い,講釈に入る前の講釈師の台詞でしんみりしてしまったなぁ。多分私個人の問題なのだけれど。
 講釈そのものは,巧いという部類では無いのだと思う。ただ,後半に突っ込んできたあれやこれやの落語の演目は可笑しかったな。ということで,結局最後は良い感じ。

 「五貫裁き」はサゲで本人曰く37分(だったかな)。変わったサゲの付け方だったけど,それはただ変わった演り方だと思っただけで,良いとも悪いとも。話自体は良かった。

 「鼠穴」は三回目だとか。些細な言い間違いとかはあったけどこれも良かった。
 五十両取られた後の台詞が個人的にはしっくりこなかったのと,ぶら下がる場面を台詞無しで進めたので,踏み台にする大きな石を運んでいる所作などは知らない人には判らないんじゃないか,と余計な心配をしてしまった以外はズット引き込まれていた。

 高らかな「来年は売れに行く!」宣言に続き,政治色濃厚?なメッセージで三本締め。元気な笑顔に一安心の今年の笑二収めでした。

※鼠穴効果か日本酒が飲みたくなり自宅で軽く二杯。

こはるの会 その七@ミュージック・テイト西新宿店

2014/12/16(火)19:30 ミュージック・テイト西新宿店

「権助魚」
「平林」
「目黒の秋刀魚」
(仲入り)
「一文惜しみ」

 雨の西新宿。客席に空きが目立つ。

 「権助魚」よかった。

 「仲入り後の話が長いから」と言いながらも「平林」の後で「秋刀魚をさらっておきたいなぁ」とボソリ。客席の「いいよ」を受けて本当に演ってくれました。この会ならではのやりとりですね。

 こはるさんの「目黒の秋刀魚」は一昨年のパラダイス以来。
あの時も気になった「吉野家」や,「あんかけ」と言っておきながらの「ムニエル」も確か同じ。ご本人は気に入っているのかなぁ。「ムニエル」って語感が何だか面白いだけに,勿体ない気がする。
 でも,ここへきて今年初めて(で,おそらく最後)の「目黒の秋刀魚」を味わえたのはラッキー。

 こはるさんの「一文惜しみ」は今年の春二度聞いている。細部はつめてきているのに纏まりが薄くなった気もする。

 独演会は今年最後とのことで,皆さんに色紙プレゼント。サインではなく手書きのオリジナルいろは歌留多。私は「る」の札をいただきました。

 私的にも今年のこはるさんはこの会で最後。来年はどんな話を聞かせてくれるのか楽しみ。

北鎌倉落語会 柳家喬太郎師匠の会で笑い納め!@円覚寺佛日庵

12月13日(土)13:30 円覚寺佛日庵

「挨拶」住職
「挨拶」植竹公和(プロデューサー)
「狸賽」桂宮治
「金明竹」柳家喬太郎
(仲入り)
「元禄女太陽伝」春風亭ぴっかり☆
「うどん屋」柳家喬太郎
「エンディングトーク」
「三本締め」

 ライヴイベントは最前列で見たい。それが我々夫婦。

別件後,大船駅で妻と落ち合ったのが11:30。一駅で北鎌倉。徒歩すぐの円覚寺。山門から歩くとはいえ,佛日庵に着いたのは12:00前。庵の入り口で確認したが流石に早すぎて戸惑われた。
開場15分前くらいに受付を開始するらしいが,庵自体は観光地としての営業時間内なので,庭に並べられた緋毛氈がかかった縁台に座って待つ。他に数人客 の姿。100円?で抹茶がいただけるらしいけど頼まなかった。もしかすると境内に入るのには本来必須なのかも知れない。申し訳ない。続いて入ってきたお客 さんは,ぴっかり☆さんが出る会でよくお見かけする方々。

ほぼ同時に宮治さん到着。暫くしてぴっかり☆さん,更に時間を置いて喬太郎さんが会場に入っていった。
紅葉の残る山並みに囲まれた雲一つ無い青空。風が冷たいので日向の縁台に移動。陽のあたる背中だけがポカポカと暖かい。

どうやら,我々の前から庭にいたお客さんも落語会目当てらしい。その後ぽつぽつと増える客も全てそんなにおい。
12:30を過ぎ,スタッフの動きが目立ち始める。テーブルを持ち出し色々と並べている。早くから会場入り口付近で立って待っていた一人のお客さんがテーブルの前に並ぶ。我々を含めた他の客は牽制し合いつつ座して待つ。
暫らく様子を伺い用意が整ったようなので妻に目配せして立ち上がる,と同時に庭にいた全員が動く。結果,整理番号は7,8番。改めて見ると結構な人数の行列。喬太郎さん人気だろうなぁ。

会場は前三列(横10人ぐらい?)が板の間に座布団。その後ろと両脇に2,3列椅子が並べられている。本尊を背にする形の高座,木製の組立式だが結構な高さのあるしっかりとした造り。これが客席と同じ板の間に張り出しているので,結果的に演者の真横まで客がいる感じ。

先に入場したお客さんは,最前列真ん中の一人以外は椅子席へ。我々は最前列の下手端を確保。ど真ん中の方との間には二席空きがある。無意味な遠慮,これも我々夫婦の持ち味かな。
そうこうするうちに徐々に席が埋まるが我々の左隣二席は空いたまま。それではと真ん中よりに移動。
ちなみに一番に並んでいたお客さんは,椅子席に陣取っていたが,それが妻には解せぬらしく「一番で入ったのに何故最前列にこないの?」と繰り返している。好みの場所があるんだよ。ちなみに高座がかなり高いので,最前列は首が辛い。
結局,開演時刻にはほぼ満席。100人近く入ったのかな。

さて,ご住職,植竹さんの挨拶に続き登場の宮治さん。前の二人の話が長いと毒づく。更に先日仕事で訪れたという某お寺でのあれやこれや。サイコロとお釈迦様の話は抜きで「狸賽」へ。二列目真ん中にいた三人の小学生もゲラゲラ笑っている。

次に久々の生喬太郎さん。両側の客席が真横まで広がっているのを見て,上下を切るのに首が凝りそうと言いつつ,北鎌倉の雰囲気を褒めあげ,返す刀で愛を込めて池袋を斬り「金明竹」。言うまでも無く面白い。

仲入り開け,ぴっかり☆さんは,師匠小朝さんをネタに「なんとか豚野郎。あッ,伏せるところを間違えた!」っていうのが,単純だけど面白かったなぁ。
この時期ということで赤穂浪士「元禄女太陽伝」。廓話なんだよね。小学生がいるんだがなぁ。今時の小学生は大丈夫なのかもしれないが,こっちが気にしてしまう。でも,前に聞いたのと較べると,チョッと表現を抑えてる所があったかな。

最後は再び喬太郎さん。「ぴっかり☆の後は宮治の後とは座布団の温もりが違う……」とニヤケて見せる。そういえば,メクリはスタッフさんがめくっているが座布団は反していないな。
話は「うどん屋」。こちらも抜群に可笑しく大受けで終了。

高座を降りた喬太郎さんと入れ違いで登場した住職と植竹さん,いきなり次回の宣伝。余韻とか!まぁ,この会も客が集まってこそ続けられるんだから,プロデューサーとしては宣伝に力が入るのも当然か。
その後改めて,演者さんが呼びこまれ,全員でトーク。喬太郎さん,来年は主役として映画撮影に入る。資金集めが大変だって。
https://motion-gallery.net/projects/springhascome

喬太郎さんの音頭で三本締め。

終了時点で16:00。鎌倉散策をしようと思っていたのですが,夫婦そろって昼食抜きだったので寒さが身にこたえ,早々に退散。

※ぴっかり☆さんを褒めておく。庭で開場を待っている時に,演者さんお三方が会場入りするところを見たが,ぴっかり☆さんだけが玄関前でコートを脱いでから引き戸を開けて入って行った。

第20回 立川談吉 大事な会@ミュージック・テイト西新宿店

2014/12/10(水)19:30 ミュージック・テイト西新宿店
「天災」
「よかちょろ」
(仲入り)
「野ざらし」

 談吉さんの「天災」は二日前に聞いたばかりだが,バーガーの先に進んだ。
「よかちょろ」は私的には今年1月以来かな。

「野ざらし」は先月の「渋谷らくご」の一回目の一日目の一人目で聞いて以来。
なんだか,もっとごく最近に聞いたような気がしてよくよく考えたら,先日発売されたCD「談志30歳」で聞いたのと混同しているかも。似ているというわけでも……無いけれど。

「天災」でリクエストには応えているし,この会の位置付けを踏まえたうえでご本人が納得しているのであれば,ネタ下ろしが無くても別にかまわない。
改めて,落語は何度聞いても面白いということを再確認。勿論,面白い落語を面白く演れる落語家であれば,であることは当然だけれど。

27日の「談吉百席」はまた意味合いが異なるはず。何を聞かせてくれるのか,勝手に期待値を上げまくって待つ。

負けてたまるか!? 桂宮治 vs 立川談吉@道楽亭

2014/12/08(月)19:00 道楽亭
「オープニングトーク」
「仏四噺」立川談吉
「薮入り」桂宮治
(仲入り)
「長短」桂宮治
「天災」立川談吉

 何とも勿体ない少なめの客入り。戸越銀座おじさんの姿も見えず。

「楽屋で話せばいい」内容が嬉しいオープニングトーク。
日本の古典を荷う若者らしく,謙譲の精神にあふれたジャンケンで談吉さんがトリに決まり頭を抱える。

「仏四噺」は,とにかく初っ端の「三っつか四っつ」がたまらないのだが,客受けと私のツボがズレていて毎回不安になる話。

宮治さんは,お嬢さんの話で良い父親アピールからの「藪入り」というあくどい演出。まともに聞いたら泣くしかない。
マジ泣きを避けたいので目を逸らして意識を半開きというか半閉じ。山場を乗り切って気を緩めたら,私が嫌いな亀吉の台詞。馬鹿な事をしたと後悔。

仲入り明け。長さんの無類の饅頭好きが伝わる一瞬が可笑しい宮治さんの「長短」。一気に温度が上がった感じ。
まさかのサゲ!マクラで落語の入りやサゲに触れてたのは,これを演りたかったんだね。く,くだらね~(褒め言葉だよ)。
話には出てこない言葉じゃなかったっけ?聞き逃したけど振ってたのかな。まぁ,皆が知ってるからいいか。ご本人も「してやったり」って感じだったし。(まるであの日の笑笑さんのように……)

談吉さんの「天災」では,威勢が良くって喧嘩好き。だけど気のいい八五郎の煙草屋での最後の台詞が大好き。
そして,「ヤナギ」から「バーガー」までのギリギリの飛躍に,今回もまた笑ってしまう。

打ち上げは女性客が一人も参加せず,演者とマスターを入れて,知った顔ばかり男性八人がテーブルを囲む冬景色。
いつもは立ちっぱなしで場を盛り上げる宮治さんも椅子に沈みこんで気が抜けた状況。客と客の間に演者を挟むなどという気配りもなく,私の隣に談吉さん,その隣に宮治さんが隣り合わせでビールを飲んでいる。
見るともなく聞くともなく,この二人が真面目な顔で落語の話をしているのが漏れ聞こえてくるのに秘かに感動。至福の時。
酒が進むにつれ,賑やかにはなるが華やかにはならない会。楽しかったなぁ。

翌々日の談吉さんのだいじな会に向けた,ハードなリクエストも出ていたけど,どうなるか。