桂伸治独演会@東京芸術劇場シアターウエスト

2014年10月30日(木)18:30 東京芸術劇場シアターウエスト
(平成26年度 文化庁芸術祭参加公演)

「やかん」桂伸力
「道灌」桂宮治
「お見立て」桂伸治
(お仲入り)
「唄,三味線,踊り」桧山うめ吉
「宿屋の仇討」桂伸治

 伸力さん,ファイトです。

 師匠の独演会なので宮治さんへの掛け声はないかと思ってたけれど,かかった。それもいつもの声と,それに先行する形で二人の声が聞こえた。
 宮治さんも「師匠の会なのに」と言いつつ,師匠の時にもかけてくれとリクエスト。
 伸力さんが予定より短く終わったらしく,長~いマクラというか漫談からの「道灌」。好きな話だけど,宮治さんの「道灌」は特に好きだ。師匠がメインだからか,やや肩の力が抜けた感じで,それがかえって良かった。

 うめ吉さんは折悪しく風邪をひかれたとのことで,声の調子が辛そう。
 初めて聞く方なので普段と比べようも無いのだけれど。声質からの想像よりやや低めに調子を抑えたように聞こえ,物凄く微妙にギリギリ制御された感じに玄人の技を感じました。

 さて,結構重篤な状況だったらしい伸治師匠復活の舞台。
 高座で拝見するのは多分二回目。テレビでも二回ほど拝見したことがある。宮治さんが「ヘラヘラ」と形容する穏やかな笑顔で登場。宮治さんの仕込みのせいか否か「大門町!」の声がかかる。
 すっかりお元気なご様子ですが,医者から「力むな」と言われているそうで「フワフワッ」と演りますとのこと。

 「お見立て」も「宿屋の仇討」も私にとっては宮治さんの高座で馴染んだ演目。宮治さんが師匠から習ったのかは判りませんが,全く違う印象の中に,どこか似たところもあり。
 そのネタが本来持っている面白さを,まんま引き出すような高座。宮治さんが歳を重ねていっても,こうはならないんだろうなぁ。

 似てないけれど,似合いの師弟でした。

挑戦!新・宮治本舗 3@国立演芸場

2014年10月22日(水)19:00 国立演芸場
ゲスト:ナイツ

「オープニングトーク」桂宮治
「金明竹」柳家蝠よし
「大工調べ(通し)」桂宮治
「漫才」ナイツ
(仲入り)
「居残り佐平次」桂宮治

 開演時刻前に緞帳上手脇から浴衣姿の宮治さんが登場してトーク,といういつものパターン。
 生憎の雨空だったので,夫婦でコソコソ「お足もとの悪い中,って言うよね」と話していた通りに始まり(そりゃそうだ),空席が目立つ会場を見渡して自虐的な話から始まるが,そうこうするうちにも次々とお客さんが入り,結局は結構な入りになる。

 一旦下がって緞帳が上がる。先ずは前座の蝠よしさんの「金明竹」。なかなか達者。そして面白い。

 続いて「阿波踊り」の出囃子で宮治さん登場。宮治さんが何を演るかを知った上での蝠よしさんのネタ選びにチクリ,というかグサリ。長いマクラに続いて「大工調べ」。

 前に宮治さんの「大工調べ」を聞いたのは9月13日の「シェアする落語」。
 あの時はトリネタだったためか密度の高い棟梁の描写に固唾をのんだ覚えがあるが,この日は比較的軽めに進み,これはこれで楽しい。「まぁ,この後に居残りが控えているからなぁ」と独り合点していたら,与太郎の(チャッカリと「金明竹」も取り込んだ)ヘロヘロな啖呵で終わらせずに,白州の場面に突入し通しで聞かせてくれた。頑張るなぁ宮治さん。

 宮治さんが高座を降りると緞帳が下がる。アナウンスも無く,ここで仲入りなのか?と戸惑いながらも席を立つ人多し。

 微妙な間の後で緞帳が上がると舞台上に座布団も高座も無く,メクリには「ナイツ」の文字。
 隣で「オー!」という声。妻の歓声である。我々夫婦そろってナイツが大好き。落語,漫才,コントその他含めたお笑い系の芸人さんの中でも最上級に好き!!
 会場がザワつく中ナイツ登場。慌てて席に戻るお客さんが落ち着いたところを見計らって始まった漫才の面白い事。塙さんのボケっぷりも物凄いが,漏れなく拾いまくって笑いを増幅させる土屋さんの突っ込みが圧巻。こちらが知らないネタや忘れていたネタでも爆笑を生み出す。
 以前ラジオで,事前の打ち合わせ無しで舞台に上がると聞いたけど,一回だけ土屋さんが突っ込み損ねたネタがあったのもリアルで面白かった。いや,笑わせていただきました。

 しかし,こんなゲストを呼んじゃって怖くないのか,などというこちらの心配は余計なお世話とばかりに,仲入り明けの宮治さん,キッチリと空気を作ります。

 四日前に鎌倉で聞いた「居残り佐平次」。あの段階でも充分に面白かったのですが,更に仕上げてきた印象。あくまでも印象なので,何処がどう違うとかは説明できませんけど。

 よく判らなかったのは,佐平治が勝さんの部屋で酒を飲むところ。初めに勝さんに注がれた後,何度となく杯ならぬ湯呑を傾け飲み干している様に見えるのに,勝さんが明確に継ぎ足すのは後半の一回だけ。
 あれは,都度飲み干しているわけではないのか,合間合間の勝さんの酌は省略しているのか,空の湯呑を飲むふりをして勝さんに無言で催促しているのか……。ちょっと理解出来なかった。

 それにしても,こんなキャラクターに宮治さんは抜群に嵌るなぁ。演じてるというより,まんま宮治さんだもの……

 サゲは「おこわ」のパターン。判り辛いことは承知の上で,マクラで丁寧に説明をしてこのサゲにするという,宮治さんの選択が好ましい。

 ゲストも大当たりで,宮治さんの高座も楽しく幸せな会でした。

 いよいよ年明け01月19日(月)の次回がシリーズ最終回。ますます高まるゲストへの期待。そしてネタおろしが「二番煎じ」と「夢金」。
 「二番煎じ」は楽しそうだな。「夢金」はどんな感じになるんだろう。前売りチケットは購入済み。ひたすら待ち遠しい。

2014立川笑二独演会 秋@お江戸上野広小路亭

2014/10/19(日)18:00 お江戸上野広小路亭

「出来心」
「道具屋」
「親子酒」
(仲入り)
「化け物使い」

 この日も押し並べて面白かった。なんでしょうね,あのチョットした言葉の選択の面白さ。

 そうそう,出囃子は「てぃんさぐぬ花」で決定なんだね。

 二十三歳の頃,私は何を考えてどんな日々を過ごしていたかなぁ……

材木座らくご会プチ・その17「らくご食堂3」桂宮治@鎌倉・コバカバ

2014/10/18(土)18:00 鎌倉・コバカバ
「道灌」
(中入り)
「居残り佐平次」

 新宿での仕事を昼過ぎ早々に切り上げて鎌倉へ。早く着きすぎたので,とりあえず会場の食堂コバカバの場所を確認。若宮大路沿いの店で,普通に営業中。失礼ながらそれほど広いスペースではない。

 小町通りをぶらつくが,アベック,もといカップルばっかりでおじさん一人での散策には似つかわしくない。
 突然海が見たくなり,若宮大路を下って辿り着いたのは材木座海岸ではなく,由比ガ浜ということになるのかな。思ったより遠かった。
 ここもカップルばかりで寂しくなったので,森田童子を聞くという逆療法を試み更に悲しくなって会場に向かう。

 開場15分前に到着すると既に4人が並んでいる。カップルが二組。なに?鎌倉はカップルじゃないと来ちゃいけないのか……。
 窓越しに会場設営の様子を眺めつつ待つ。そのうちにカーテンが閉められ,更にカップルが一組み並んだところで開場。

 外から見た通り期待を裏切らない狭さ。道○亭やテ○トよりも狭いか。最大30人と聞いていたが,この日の25人ほどで一杯じゃないかなぁ。他の宮治さんの会でお会いする顔は見当たらず,地元の方が中心のようです。

 開演時刻が迫りお囃子が流れ,主宰と店長の挨拶。
 その後,出囃子無しで宮治さん登場。道路側の窓が一部開いているようで,お寺の鐘の音が陰にこもってゴ~ンと聞こえるのはまだしも,バイクのエンジン音が気になるなぁと思っていたら,やっぱりいつの間にか閉められていた。

 生落語は初めての方が複数,10回未満も何人か。そのうえ小学生らしきお子様も4人いたためか,上下や扇子と手ぬぐいを使っての基本所作などの話から入るが,直ぐに客をイジリはじめ爆笑連発。子供にもうけている。

 「道灌」は大好きな話。目の前に腕時計を置き時間を気にしながらも結構タップリ。
 八五郎が自分で言った冗談に自分で反応する件が,以前に聞いた時よりもスッキリと仕上がって良い感じ。

 終わって下がる際に,羽織を探すも急ごしらえの高座の後ろに落ち込んで取れず。「取っておいて」と言い置いて去る。お客さんが二人がかりで回収。

 仲入り開けてデイビー・クロケットで再登場で「居残り佐平次」
 「もう一枚羽織を用意していたけれど,汚したくないから」と着流しで。
 私としてはここで演るだろうとの期待通りですが,この日のお客様の前で「居残り佐平次」を演るについては,何やら言い訳めいた前置きがあったり,お子様がいる席で廓話をかけるにあたっての葛藤もあるらしく,何やらゴニョゴニョ言いつつ,これだけはと「おこわ」についての説明を念入りにふって話に入る。
 偉そうに言うわけではないけれど,落語を聞き慣れていない方やお子様にとっては,もっといろいろと判らない背景や用語もあるだろうが,さすがにそこまでは手が回らないというか気が回らないというか。

 ご本人はSNS等で不安に震えている(態の)ネタではありますが,こちらとしては全く安心しきっているわけで,結果的にもやっぱりねという出来。
 皆さんも充分楽しんでいた様子。

第三回 こはるパラダイス築地編@ブティストホール

2014/10/15(水)19:00 ブティストホール

「猫と金魚」
「提灯屋」
(仲入り)
「居残り佐平次」

 前半二席はいい感じで聞かせます。このような小さめの話を面白く聞かせてくれるのは力が付いてきた証かしだと思います。

 さて,「居残り佐平次」ですが,佐平次が「わかってるよ」「こころえてるよ」という時に繰り返す「こころえちょろ」って何?初めて聞く言い回しだけれど。

 こはるさんの口調の良さは佐平次のような幇間的な調子とはちょっと違う気がしますが,だからといってそんなに違和感があるわけでもなし。
 なかなか良い感じで進むが,佐平次のお座敷デビューの件で勿体無いトチリが出てしまった。優しいお客さんの反応に救われて持ち直す。

 サゲは,主人が佐平次を裏口ではなく表から返して「裏を返されたくない」。

第18回 立川談吉 大事な会@ミュージック・テイト西新宿店

2014/10/11(土)19:00「立川談吉 大事な会」ミュージック・テイト西新宿店(曇り)

「ぞろぞろ」
「田能久」
(仲入り)
「火事息子」

 誠に申し訳なかったが,この日の私は眠かった。寝不足が続き当日は仕事の後,会が始まるまでの時間で仮眠を取ろうと思っていたのだが,仕事が長引いたり,急な冷え込みで思わず無印良品にフリースベストを買いに行ったりして,結局その時間も無かった。

 なわけで前半は記憶の瞬断もあるけれど,「ぞろぞろ」は好きな話。楽しいぞろぞろだった。
 「田能久」はご本人もおっしゃっていたが,談吉さんで良く聞く話。そんな話の中にこそ面白い発見がありそうなものですが,聞く側も最低限の体調は整えてこないとね。勿体ない。 

 「火事息子」はネタおろしかな。志ん朝さんとかの音源で聞いたことはあるのですが,随分と印象が違う。
 同じ物語だけれど,序盤から中盤で取り上げている部分が違うのかな。
 父子の対面から母親が絡んでくるあたりは,聞き知ったやりとり。母親のはしゃぎっぷりが可愛い。

 話を「ぞろぞろ」に戻します。談吉さんで聞くのは初めてだと思っていたのですが,調べてみたら聞いていました。
 私の初談吉が一昨年の「ぞろぞろ」だった。

 私は今でもそれほど多くの落語家さんを聞いているわけではないが,当時は今以上に間口が狭かったし「立川談吉」という落語家の存在は談志さんが亡くなるまで知らなかった。
 「談志が死んだ」とたんに氾濫した関連情報のなかで見かけた「立川談吉」という名前は,常に「立川談志最後の弟子」というキャッチフレーズがくっついていた。
 「胡散臭い」というのが正直な印象だった。

 あのままであれば,自分から積極的に立川談吉を聞くことは無く,寄席や一門会より独演会に行く方が圧倒的に多い私は,偶然にしても立川談吉の落語に出あう可能性も低かったろうな。

 2012年1月31日のよみうりホール。妻と出かけたのは「談志ザ・ムービー『芝浜2007特別編』」夜の部。

「ぞろぞろ」立川談吉
「火炎太鼓」立川志らく
(仲入り)
「芝浜」(映像)立川談志

 当時の記録

談志最後の弟子となった立川談吉さんの「ぞろぞろ」。初めて拝見するが,千人を前に怯む素振りも見せず,客席の反応を確認しつつ堂々の高座。30歳になったばかりとのこと。面白い。楽しみ。

と書き残している。この印象はよく覚えている。

 私は熱狂的というほどの談志ファンではなく実際の高座を拝見したのは数回くらい。最後が2007年の芝浜だった。
 複雑な気持ちでその時の高座の映像を確認しに行ったのだけど,都合よく勝手に解釈して,談志さんが最後の弟子を私に紹介してくれたんだと思うことにしている。
 「まぁ,とりあえず一回聞いてやってくれ。」ってところかな。

 結局その一回で私は立川談吉を聞くようになり,今では最も頻繁に聞く落語家さんの一人になりましたとさ。

 あぁ,そうか「ぞろぞろ」だったか。ぼんやりと思いだしてきたような……

エレキコミック第24回発表会@博品館劇場

2014/10/08(水)19:30 博品館劇場
 コントは当然のこと,幕間映像の秀逸な事!!
 周りにも面白い人が揃っているんだよね。っていうか,面白くしちゃうのか。
 (片桐さん,いい人だな。)

 この日の白眉はアフタートーク。エレキコミックと,東京ポッド許可局メンバーであるプチ鹿島さんとサンキュータツオさんという,私にとっては夢の顔合わせ。
 許可局が何々論として言葉で表現している面白を,身体を使ったコントで表現しているエレキコミックが羨ましいという許可局側の言葉は社交辞令じゃないと思う。

「どうらく息子」落語会@よみうりホール

2014/10/01(水)18:00

「トーク」柳家三三,立川談春,尾瀬あきら(「どうらく息子」作者)
「鰍沢」柳家三三
「紺屋高尾」立川談春

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柳家三三さんと立川談春さん。管見ながら知る限り最高峰のお二人を聞く幸せ。

しかしながら「談春の紺屋高尾」は私にとって特別過ぎる話で,この夜の高座は身勝手な期待には及ばなかった。
出来不出来ということではなく,三三さんの高座からの流れを踏まえ,会全体を見据えたあの場での談春さんの判断が,私の望んでいたものではなかったということなので,次の機会を久蔵のごとく胸を焦がして待つしかない。

とは言うものの,昨年のにぎわい座と同じで「アイラブユー」と聞いた瞬間から泣いているのだから,隣にいた妻が呆れるのも,そりゃ至極ご尤もです。

三三さんの「鰍沢」は素晴らしく,「紺屋高尾」も笑いを増量しつつ,締めるところはキッチリ締めるという,談春さんならでは緩急自在の見事な高座だった。でも,私にとっては,今年一番の残念な落語会だったなぁ。

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