2014/09/13(土)14:30 古石場文化センター・古石場図書館
「子ほめ」雷門音助
「百川」桂宮治
(仲入り)
「シェアタイム」桂宮治×四家正紀
「大工調べ(上)」桂宮治
八日の深夜に発症して七転八倒した大腸炎も回復。宮治さんの落語を間近で見ても耐えられる体力も戻ったと判断。
妻と二人,最前列狙いで早めに出かける。門前仲町駅から夏に戻ったかのような日差しのなかを歩き,開場30分前には到着したが既に数人待ち。
何人かの知り合いと話しながらロビーで待つ。開場時刻も近くなった頃に,大きな荷物を背負った宮治さんがしれっと会場に入って行った。前の仕事から駆け付けたらしい。
開場。最前列下手寄りを確保。隣には通称戸越銀座おじさん。
主宰の四家さんの挨拶に続いて,この会では初の前座となる音助さん。何というか,ちゃんとしてるし面白い。
「戸越銀座!!」の掛け声で登場した宮治さん。それはそれは長~いマクラというかトーク。惜しいことに何一つとして文字に残せない内容だけど,ある人の年収の話で過敏に反応した妻が突っ込まれたことは記念に残しておく。
久しぶりに聞いた「百川」。やっぱり,抜群に面白い。
前回まで気になっていた,二階で手が鳴るのに応えるときの百川主人の視線が上向きに変わっていたのがうれしい。
長谷川町三光新道を訪ねる件で「平川町」を挿しこんでくる辺りもじわっとくる。
百兵衛さんの説明が,私の耳には完全に「袈裟がけに四、五人切られ」と聞こえたのは勢いか意識的なのかは判りませんが,個人的に結構うけた。
その前の河岸の若い衆の台詞でも,既に「カメモジ」を「カモヂ」って言っちゃってないか!? ってところもあったけど,まぁそこは勢いのあまりかな。こちらの耳のせいかもしれないし。
けど,ここから丁寧な説明を入れてきたのは勢いが止まって勿体無い。
四家さんの宮治愛にあふれた「シェアタイム」の話も興味深い。
今回は格好いい宮治さんの高座姿の写真が撮りたくて,光学ズーム付きのデジカメも持参したのですが,宮治さんてばサービス精神過多から面白い顔ばかりしてくれるので,「格好いい宮治さん」の写真は撮れませんでした。その徹底した姿勢が格好いいけど。
続く「大工調べ」。この日の言いたては見事でした。これでもかこれでもかと笑いを入れる宮治さんですが,この啖呵の前ではシリアスな棟梁と大家のやり取りが続き緊張が高まる。宮治さんの「固唾をのむ」演技に見ているこちらも固唾をのむ。
一転,尻をまくった棟梁の啖呵の迫力。中手が起きるが流れを止めることなく与太郎に話を振ると,再び爆笑の嵐。
ここだけの話,あの啖呵で涙が出そうになった。これだけの力を持っている男が,コソコソでは下ネタ担当キャラを演じ,この日のトークでも己の身を削るようなサービスで客席を沸かせ続けていた姿を思うとジンときてしまう。
落語の見方としては歪んでいるが仕方がない。結局最後は笑って終わるのだからよし。
粗を探せば,あれだ。
この話は,大家に対して堪忍袋の緒が切れた棟梁の啖呵の小気味よさと,この日は演じられなかったけど,後半の御裁きでも大家が罰を受けて客も溜飲を下げるってところが眼目だと思うのだけれど,その為には類型的すぎるくらいに大家が因業であることが前提。
ところが,棟梁が与太郎を連れて大家に詫びに行く場面の初っ端に、大家が棟梁に対して「与太郎が世話になっている。よろしく頼む。」って言うんだ。店子思いのいい大家じゃん!!
そうなると,大家の方に分があるように思えてくる。もともと店賃ためたのは与太郎だし,大家に対して非常識なことを言って怒らせたのも与太郎だし。棟梁の言い方だって確かに失礼なんだよね。
そう考えると棟梁の啖呵のカタルシスも薄れ,逆切れの悪口じゃんってなりかねない。
ただ,今回のように後半の御裁きの場面無しならば,どっちが良い悪いじゃなくって,その場限りの大人げない大人同士の喧嘩を面白がるのもいいかもね。
粗探しはさておき……
本当に良い落語会でした。打ち上げも盛況で,というか盛況過ぎて大勢の参加者の間をあちこち渡り歩く宮治さんが大変そうだったが,お陰で大層盛り上がった。主催の四家さんも嬉しそうだった。
帰り際には,宮治さんから Hug and kiss のプレゼントもいただいた。嬉しいかどうかは全く別の話だけれど……。