こはるパラダイス 第11回@のげシャーレ

2014/09/30(火)19:00 横浜にぎわい座・のげシャーレ

「ガマの油」
「野ざらし」
(仲入り)
「万金丹」

 ストレートで気持ちの良い落語です。

 開演直前にドアノブに引っ掛けてザックリと破れた袴を安全ピンでとめて登場のこはるさん。

 先日の大雨で名古屋の地下鉄が浸水した日の前日に日帰りで戻った話。お馴染み大國魂神社の話。給湯機が壊れてシャワーが使えないけれどIHでお湯を沸かして行水しているのでそれほどの不便は感じていないとか。

 こはるさんの言い立てについては,師匠である立川談春さんやその師匠である立川談志さんからの流れを意識してハードルを挙げている私がいて,正直なところ常にハラハラと背中合わせで満足したことはないのです。
 口跡の心地よさは別格で,特に何が悪いということではなく,積み重ねによる全体的な底上げを待つばかりです。

 それと,今さらですけど……歌は得意ではないのかな?

※「野ざらし」で浮かれた八五郎に対して他の釣り客が「談吉みたいな声出しやがって!!」っていうのが,私的には結構ジワジワ来たのだけれど,あの場のお客さんにはあまり伝わらなかったのかも。惜しいな。

談吉百席 第七回@サンライズホール

2014/09/20(土)19:00 サンライズホール
「ろくろ首」
「蝦蟇の油」
(仲入り)
「品川心中(上)」

 曇り,ほんの一時小雨。一応の挨拶代わりか。

 談吉さんの「ろくろ首」を聞くのは二回目。
 前回はバレがかった一言に爆笑だった。この日の百席では襟を正したか,そこは省いたけれども,面白さは健在。
 鞠と猫の件はとってつけた感が拭えないのだけれど,省いてしまうと物足りないのかなぁ。談吉さんはどう感じているのかわからないけれど,きちんと演ってくれて笑わせてくれる。

 「蝦蟇の油」も二回目。
 酔った時の口上の面白さが独特。特にスメルには弱い。笑っちゃう。ついでに個人名でも笑ってしまうのだけれど,判らないままに笑っちゃっている。知ってる人がいたら教えてください。

 「品川心中」は初。
 私的に勝手にこれは無いだろうと思っていたので,品川の話を始めた時は半信半疑だったのだけれど,終わってみると意外に納得。
 逆に,無いと思っていたのが何故なのか自分でも不思議。上下通しで聞いてみたい。

 談吉百席八回目となる次回は12月27日の土曜日とのこと。昨年に続いて暮も暮れの慌ただしい時期だなぁ。
 昨年末の「富久」は良かった。今年の「年末っぽい噺(談吉談)」ってなんだろう。楽しみ。

シェアする落語 第7回 桂宮治@古石場文化センター・古石場図書館

2014/09/13(土)14:30 古石場文化センター・古石場図書館

「子ほめ」雷門音助
「百川」桂宮治
(仲入り)
「シェアタイム」桂宮治×四家正紀
「大工調べ(上)」桂宮治

 八日の深夜に発症して七転八倒した大腸炎も回復。宮治さんの落語を間近で見ても耐えられる体力も戻ったと判断。
 妻と二人,最前列狙いで早めに出かける。門前仲町駅から夏に戻ったかのような日差しのなかを歩き,開場30分前には到着したが既に数人待ち。

 何人かの知り合いと話しながらロビーで待つ。開場時刻も近くなった頃に,大きな荷物を背負った宮治さんがしれっと会場に入って行った。前の仕事から駆け付けたらしい。

 開場。最前列下手寄りを確保。隣には通称戸越銀座おじさん。
 主宰の四家さんの挨拶に続いて,この会では初の前座となる音助さん。何というか,ちゃんとしてるし面白い。

 「戸越銀座!!」の掛け声で登場した宮治さん。それはそれは長~いマクラというかトーク。惜しいことに何一つとして文字に残せない内容だけど,ある人の年収の話で過敏に反応した妻が突っ込まれたことは記念に残しておく。

 久しぶりに聞いた「百川」。やっぱり,抜群に面白い。

 前回まで気になっていた,二階で手が鳴るのに応えるときの百川主人の視線が上向きに変わっていたのがうれしい。
 長谷川町三光新道を訪ねる件で「平川町」を挿しこんでくる辺りもじわっとくる。
 百兵衛さんの説明が,私の耳には完全に「袈裟がけに四、五人切られ」と聞こえたのは勢いか意識的なのかは判りませんが,個人的に結構うけた。
 その前の河岸の若い衆の台詞でも,既に「カメモジ」を「カモヂ」って言っちゃってないか!? ってところもあったけど,まぁそこは勢いのあまりかな。こちらの耳のせいかもしれないし。

 けど,ここから丁寧な説明を入れてきたのは勢いが止まって勿体無い。

 四家さんの宮治愛にあふれた「シェアタイム」の話も興味深い。
 今回は格好いい宮治さんの高座姿の写真が撮りたくて,光学ズーム付きのデジカメも持参したのですが,宮治さんてばサービス精神過多から面白い顔ばかりしてくれるので,「格好いい宮治さん」の写真は撮れませんでした。その徹底した姿勢が格好いいけど。

 続く「大工調べ」。この日の言いたては見事でした。これでもかこれでもかと笑いを入れる宮治さんですが,この啖呵の前ではシリアスな棟梁と大家のやり取りが続き緊張が高まる。宮治さんの「固唾をのむ」演技に見ているこちらも固唾をのむ。
 一転,尻をまくった棟梁の啖呵の迫力。中手が起きるが流れを止めることなく与太郎に話を振ると,再び爆笑の嵐。

 ここだけの話,あの啖呵で涙が出そうになった。これだけの力を持っている男が,コソコソでは下ネタ担当キャラを演じ,この日のトークでも己の身を削るようなサービスで客席を沸かせ続けていた姿を思うとジンときてしまう。
 落語の見方としては歪んでいるが仕方がない。結局最後は笑って終わるのだからよし。

 粗を探せば,あれだ。
 この話は,大家に対して堪忍袋の緒が切れた棟梁の啖呵の小気味よさと,この日は演じられなかったけど,後半の御裁きでも大家が罰を受けて客も溜飲を下げるってところが眼目だと思うのだけれど,その為には類型的すぎるくらいに大家が因業であることが前提。

 ところが,棟梁が与太郎を連れて大家に詫びに行く場面の初っ端に、大家が棟梁に対して「与太郎が世話になっている。よろしく頼む。」って言うんだ。店子思いのいい大家じゃん!!
 そうなると,大家の方に分があるように思えてくる。もともと店賃ためたのは与太郎だし,大家に対して非常識なことを言って怒らせたのも与太郎だし。棟梁の言い方だって確かに失礼なんだよね。
 そう考えると棟梁の啖呵のカタルシスも薄れ,逆切れの悪口じゃんってなりかねない。

 ただ,今回のように後半の御裁きの場面無しならば,どっちが良い悪いじゃなくって,その場限りの大人げない大人同士の喧嘩を面白がるのもいいかもね。

 粗探しはさておき……

 本当に良い落語会でした。打ち上げも盛況で,というか盛況過ぎて大勢の参加者の間をあちこち渡り歩く宮治さんが大変そうだったが,お陰で大層盛り上がった。主催の四家さんも嬉しそうだった。

 帰り際には,宮治さんから Hug and kiss のプレゼントもいただいた。嬉しいかどうかは全く別の話だけれど……。

第17回 立川談吉 大事な会@ミュージック・テイト西新宿店

2014/09/10(水) ミュージック・テイト西新宿店

「粗忽長屋」
「がまの油」
(仲入り)
「竹の水仙」

 雨……降ったりやんだり。

 お馴染みの「粗忽長屋」のあとは,前回のリクエストから二席。

 「がまの油」はネタおろし。

 言い立てでチョとしくじってセルフ突っ込み。「ネタおろしだから」とおっしゃっていましたが,普通に言い直せばそんなに気にならないように思うのだけど。何でしょう,自分への期待値が高いんですかね。

 談吉さんの言いたては好きだな。さあ聞かせどころですよ!! っていう押しつけがましい感じがなく,気持ち良く揺らぐテンポ。その後への繋ぎも絶妙なので中手が入り辛いのも私は好ましく思うのだけれど,ご本人は欲しかったりするのかな,中手。
 がまのスメルとかの切り取り方もたまらない。

 「竹の水仙」は何度か演っているようで,テイトでも一度かけているらしい。私が行けなかった「50%」の時なので,私にとっては初。
 お鍋どん(だったかな?)で笑ってしまったが,返事だけで後は出てこないんだ。もう一回くらい出て欲しいな。

 次回へのリクエストは書かなかった。皆さんのリクエストと談吉さんの選択を含めて楽しむことにする。
 談吉さんの会には独特のワクワクがある。隠し味にハラハラを少々。混ぜたからといってワラワラにはならない。それは別の人だし。

瀧川鯉八独演会@couzt cafe

2014/09/04(木)19:30 couzt cafe

「都のジロー」
「暴れ牛奇譚」
(仲入り)
「俺ほめ」
(やぶのなか)

 「俺ほめ」は初めて聞いた。
 初め三席とおっしゃっていたのだが,時間的に短いと思ったのか,「俺ほめ」後に「一応これで終わりですけどもう一席。お帰りの方はどうぞ。」といいながら「やぶのなか」を演ってくれた。こちらは名前だけは知っていたが,実際に聞くのは初めて。

 面白いなぁ。鯉八さんは個人的に当たり率が高い。六月にレフカダでの桂宮治さんとの二人会で拝見して以来の鯉八さん。やっぱりこの日も抜群に面白い!

 というわけで,落語そのものは非常に満足な会だった。

 ここからは雑事。この数日前の「宮治 vs 扇」の帰りにiPhoneを二台まとめて紛失。結局見つからずに,この日softbankの方だけを機種変更したばかりという,かなり落ち込みイラついた状態での愚痴っぽいメモ。

 この日の会は自由席。予約で満席という事前情報があったので,見やすい席を確保するために早めに出かけた。

 JR日暮里駅から歩く。込み入った道を新しいiPhone5cを頼りに辿り,開場20分前着。この季節,時刻も時刻なので暗くなりかけていたが,途中の町の風景や店の感じもよかった。到着時点で並んでいる人はいない。

 「close」と表示されたガラスのドアや大きな窓から中の様子が見える。私服で高座に座ってリハーサル中の鯉八さんと目が合う。スタッフが出てきて開場時刻まで待つようにとの指示。
 会場であるコーツトカフェさんは手作りの靴や鞄を扱ってるらしいので,元鞄屋としてはそちらも興味津津だったのだけど,少なくてもイベントがある日は商品が沢山並んでいるって感じではなさそう。

 入り口脇で独り待つ。暫くすると若いカップルが当たり前のように店内に入りスタッフと談笑しながら席に着く。お馴染みさん特権なのか,細かい事を言いたくはないが待ってる人がどう感じるかは気にした方がいい。

 そのうち,私の他に三人ほど並んだあたりで,やや早めに開場。

 電話で予約したはずの私の名前が受付に無い。だからといって入場を断られたわけではないが……。

 程よい広さに30弱?くらいの椅子が並べられた店内。最前列だけがソファ。左に一人掛け,右に3,4人がけ。二列目以降はおしゃれな椅子。
 初め二列目の上手側に座ったが,しばらくして最前列のソファ上手側に移動。圧倒的に楽ちん。

 ぽつぽつと客が増える。女性客が私の隣に座る。このときのスタッフの説明ではソファは三人がけの計算らしい。

 別の女性が,スタッフに「知り合いが来たいらしいんだけど」と相談。大丈夫との返事。満席とはいえ余裕は見てあるだろうし,キャンセルもあるだろう。固定席では無いので融通も利くだろう。

 最前列のソファは詰めれば四人座れるが,この時点では二人だけ。私と離れた逆端ではなく私の隣に座ったのは演者の真正面を避けたのだろう。

 その女性は二列目の女性と親しげに話している。多くの落語会に通っているようで詳しそう。二人が一緒に入店したのかは未確認だけど,纏まって座りたいのであれば,未だこの段階ではソファ席に余裕があった。

 しばらくすると女性スタッフが私に近づいて来て「ご提案があるのですが」と。
 要するに「混み合うのでソファは女性四人に座っていただきたい。ついては,二列目の女性と替わっていただけないか。」ということ。これは,後ろの女性客では無くそのスタッフ発信。

 理屈は判る。一般論として男性より女性の方が華奢。私は男性としてはそれほど幅広い体型では無いが,詰めて座るのに,見知らぬオジさんの隣よりは知り合いの女性同士のほうが良いだろう。理屈はよく判る。
 店側にも女性客にもメリットのある「提案」。

 で,私にとっては?
 受け入れた場合は「もの判りの良いお客さん」という称賛と引き換えに,自分で最善だと判断した居心地の良い席から,一つ後ろに移動。後ろとはいえわずか一列。もともと初めに座った席でもある。

 断った場合は「もの判りの悪い身勝手な客」と罵倒されながら最前列を確保。ソファに三人座るか四人座るかは判らないが,スタッフの善意の「提案」は私以外の客の耳にも届いている。それを断った私は,どう考えても居心地が悪いだろう。

 どちらにしても,この時点で既にこの日のこの会に私の居心地のいい席は無い。

 となると,後は私以外のメリット次第か。そうなれば,スタッフの提案を受け入れた方が,全体としては+なのでしょう。

 席を移る際に,そのまま帰ろうかとも思ったけれど,それも大人げないし,極力何でもない事のように席を替わって,腑に落ちない思いを大切に育みながら開演を待った。

 落語は文句なしで面白かった。初めて開催する落語会を皆で気持ちよく過ごして欲しいというスタッフの意気込みもよく判った。ただ,「正しい提案」で相手の逃げ道をふさぐ手法がディベートでは正解だとしても,私が落語に求める空気感とは違ったということかな。

 この日のチラシに掲げられていたコピーは「人の心の狭さにスポットをあてた独特の世界観」。
 振り返ってみれば,まさに,己の心の狭さと向き合うことを余儀なくされた会だった。うん,お見事!