2014/03/20(木)18:30 落語協会二階
「保母さんの逆襲(林家彦いち作)」
「二人の秘密」
(仲入り)
「影の人事課」
粋歌さんを生で体験するのは二回目。前回は2012年8月道楽亭。立川こはる,桂宮治,三遊亭粋歌,古今亭志ん吉の四人の会だった。
暫く前から聞き始めていたこはるさんと,その頃落語会で時々顔を合わせていた人が強く推していた宮治さんが出演するということで出かけた。
その会で私はまんまと初見の宮治さんにはまったのだったなぁ……
その時のネタは「人祓い神社」。題材に苦手な要素があり楽しめなかった記憶があるが,ここ最近,前述の知り合いがご自身のブログで粋歌さんを強く推している。影響され過ぎとは思うが気になるので,五月に開催される粋歌さんの独演会を予約した。
その前に一度くらいは見ておきたいと思っていたら18日の「らくごくら」で,昨年三月収録の高座が放送された。「銀座なまはげ娘」。
続いて,20日にゲリラ的に開催されたこの会。
不安な気持ちで初めて落語協会の建物に入る。落語協会に入るのが不安なわけではなく粋歌さんを聞くのが不安。少ない体験から粋歌さんの話はせつないのではないかという印象があり,私は「せつなさ」に弱い。
時間調整しつつ開場時刻ぴったりに到着で一番乗り。徐々に人が増え開演時には結構な入り。例の方や他の顔見知りもおられたのですが「せつなさ」に怯える私は独り開演を待つ。
いざ,開演。会場と私の間に温度差がある。会場がドッとわいているタイミングで笑えない。期待し過ぎからの期待外れとかではなく,私の身構え過ぎ。「せつなさ」に腰が引けている。
「保母さんの逆襲」で少しほぐれたところに,会場からのリクエストにこたえる形で「二人の秘密」。
先妻が亡くなったのは30年近くも前のことなのに,ふと未だに片付かない気持ちの乱れに躓いてしまうことがある。
沢田知可子さんの「会いたい」みたいなあからさまな表現であれば避けられる。ちょっと視点は違うけれど柳家喬太郎さんの「ハワイの雪」ならば嫌いな話として耐えられる。
でも「二人の秘密」,これは駄目です。逃げられません。
というわけで,身も心も硬化しつつ辿り着いた仲入りで体勢を立て直す。
「影の人事課」は笑えた。けれど,何だか疲れたので,終演後に皆さんが会場の片づけを手伝う中,そそくさと会場を後にする。
さて困った。私はよる年波で,涙脆くなっていることもあり「せつなさ」に弱い。滅法弱い。でも「弱い」=「嫌い」じゃない。酒に弱いひとが酒嫌いとは限らない。
いっそ嫌いならば聞かずにすむけれど,素敵なせつない話は聞きたい。人目をはばからなくてよいのであれば,むしろ好きなのかも。
素敵なせつない話には作り手の観察力と語り手の表現力が不可欠で,粋歌さんにはこの二つが備わっているらしい。(表現力は未だ未だ伸びる余地があると思うけど。)
さても悩ましい今後の対粋歌さん対応はおいおい考えるにしても,先ずは五月の独演会だな。
どんな演目になるかは判らないけど,おそらくどの演目にも「せつなさ」が潜んでいる。せつなさに浸れるようにメンタルを鍛えて挑みます。