2014/02/13(木)18:45 深川江戸資料館
「平林」春風亭一力
「弥次郎」桂宮治
「初天神」春風亭ぴっかり☆
「口入屋」林家時藏
(仲入り)
「トーク」尾瀬あきら(「どうらく息子」作者)×林家時藏
「死神」柳家三三
漫画「どうらく息子」に因んだ会で,時藏さんが主催。何度か開催されたようですが,この日が最終回。
協会メンバーに,独り芸協の宮治さんという顔付けが面白いのと,三三さんの出演に惹かれて出かけてみた。
宮治さんもこの漫画に取材協力で名前が載っているらしい。監修が三三さん。
今年二つ目にあがる前座の一力さんは,明るく聞きやすく良かった。
前座さんも充分に面白いなぁと思ったが,次の宮治さんの面白さは段違い。二ツ目二年生,前座さんとは違うということか,宮治さんが特別なのか。
続くぴっかり☆さん,時藏さんも面白く,仲入りをはさんでトーク。トリで三三さん。
三三さんを生で見るのは二回目。前回は二年前の三月「渋谷に福来たるSPECIAL」。他に桃月庵白酒・柳家喬太郎というスター揃いだった。前座は入船亭辰じんさん。今の小辰さん。
その時の三三さんの演目は「明烏」。一緒に見た妻が,時次郎を吉原に送り込もうとする大旦那をにらむ奥さんの顔が気に入って,今でも真似しようとする。全然出来ていないけれど。
その後はテレビで時々拝見するばかりだった三三さん。久々の生を楽しみにしていた。
三三さんの高座が始まってから入場したお客さんがいたようで,軽~く弄る。宮治さんの弄り方とは趣きが違う。笑いの量や密度で言えば宮治さんの方が勝っているかもしれない。
でも話が進むうちに,私は三三さんの世界に捕り込まれ,そんな状況でぼんやり別の事を考える。
最近はお気に入りの二ツ目さんを聞く機会が多く,特に宮治さんは常に間違いなく面白い。でも,前座さんと宮治さんが違うように,二ツ目の宮治さんと真打 の三三さんの間にも明確な差がある。当たり前のことだし,この駄文が宮治さんの目にとまっても怒られることもないと思う。
話はここから。私はそのとき前日のレフカダで鯉八さんを評した宮治さんの台詞を思い出た。
「三三師匠なら爪痕の付けようもあるけれど,鯉八さんはどうしていいか判らない。」
これは,自分とは違う方向で模索している鬼才瀧川鯉八さんへの賛辞だ。
同時に,タイプは違うといえど,同じ古典の道で遥かに先を進む三三さんに対して,現時点では及ばないという自覚と,それでも爪痕くらいは残すという気概が溢れ出た台詞だったんだと,このとき改めて思い当たった。
私にも判る三三さんの凄さ。いわんや宮治さんにおいておや。
三三さんの死神に惹かれながらの妄想。宮治さんが大きな壁に爪をたてて攀じ登っている。頂は遥かな高みで,その壁はなお日に日に高さを増していく。登れ ば登るだけ遠ざかる頂。いつか,その頂に手がかかっても,その向こうにはまた別の更に高い壁が幾重にも立ちはだかっている。
そんな画を思い浮かべたら胸が痛く,目頭が熱くなってしまった。厄介な途に踏み込んだものだなぁ。
まぁ,そんな苦しみは演者さんにまかせて,こちらは余計なことを考えずに,ただ笑いたい。そんなときこそ宮治さんの落語がいい。
26日(水)は横浜市民としてははずせない「のげシャーレ」での宮治さんの独演会。妻と一緒に出かける予定。
前回は「暴れ牛奇譚」で驚かせてくれた。今回は何を演ってくれるかな?
※同日,東京ドーム公演を予定しているストーンズには,昨年の「独演会ですゥ 秋」とのバッティングで痛い目にあったポールが忠告してあげたらいいのに。